成人教育3
成人教育を日本で生涯教育と言い換えたのには何か理由がありそうですが、おそらくは諸外国と比べて概念が違うと思ったからでしょう。
まず多くに国において、識字教育という問題があります。日本は識字率が高い国で、その理由は移民が異常に少ないことにあります。識字率が低いのは主として貧困と移民が原因です。学校に通えない子供が多い国では必然的に識字率が下がります。また移民が多い国では、その国の言語の文字が読めない人口が大きいのは当然です。また近年は少なくなりましたが、文字をもたない言語は多く、無文字言語と呼ばれます。無文字言語 (unwritten language) とはたんに文字に書かれることがないということではなく,研究者などによって書かれることがあるとしても社会に定着しておらず,それが通信や記録の媒体として機能していない言語であるとされています。
無文字言語の数については、確かなことは言えないようで,文字化された言語は,世界におそらく数%しかないのではないかという意見の専門家が多いようです。実際的に世界のほとんどの文字が無文字言語なのであるという意見もあります。実は無文字言語の母語話者が文字を知らないとは必ずしもいえず、非母語で教育を受け,その非母語の文字を習得している可能性もあります。実際、世界の多くの人々がそのような状況におかれていて、母語(あるいは母国語で)教育を受けられる国というのは少ない、ということは案外知られていません。多くの言語はアルファベット、アラビア文字などの外国の文字を利用しています。たとえ外国文字であっても、その民族の言語が記述できれば識字率は上がります。そもそも文字そのものを学習する機会がない人々が世界には相当数いる、というのが現実です。そして不法移民の多くは学習機会がなく、識字力がないまま他国に移住しているわけです。そういう人々に文字の学習機会、そして職業訓練をして、国民として受け入れる政策をしなければならない国がたくさんあります。それは欧米などの、いわゆる先進国も同じです。先進国では成人教育がその任を担っています。
日本の生涯教育では文字教育はしていません。夜間中学や夜間高校といった就学機会を逃した成人への教育機関はあり、それは成人教育なのですが、生涯教育には入れていないのです。諸外国では、成人教育として移民のための語学教育があり、それは自国語の教育です。以前にご紹介したTeaching English as a Foreign Languageというプログラムは児童教育でもあり、成人教育でもあるわけです。むろん入学試験などなく、ほとんどは無償です。日本からの語学留学生の中には、正式な大学の予科に入るだけの英語力がなく、成人学校adult schoolに入って英語を勉強した人も含まれています。結果的に英語が学習できれば、どこの学校を出ていてもかまわないのですが、「アメリカ語学留学」という美名に隠れて、成人学校入学を斡旋する業者もあるようですし、大学予科という制度もあるので、アメリカの大学を正規に卒業し学位を得た、という場合とは区別した方がよいと思われます。
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