夏至
夏至というと、言葉だけみると、夏の真っ盛りという感じですが、実際には理科の時間に習ったように、日差しが一番長い日ということです。夏至は6月に来るので、日本人の感覚だと真夏は7月、8月ですから、夏至の意味は薄いのかもしれません。しかし、ヨーロッパでは昔から夏至は大切な日で夏至祭が今も盛大に行われます。とくに北欧では、太陽が長く照る夏は快適な日々であり、楽しい期間ですから、そのピークである夏至は暦の月よりも実感的に優先されます。実際には、北欧でも暑さのピークは7月中旬なのですが、それでも20°程度で涼しいので、6月から8月の夏は快適な期間です。厳しい冬が過ぎ、ご褒美のようにやって来る北欧の美しい夏は、沈まない太陽の光に心と身体を自由の境地へと解き放つ静寂があり、この世の楽園のようにあたり一面に咲き、誰もが楽しい期間なのです。北欧の人々にとって、6月の夏至祭と12月のクリスマスは一年を通して、同じくらい大切にされている国民の二大行事です。じつはどちらも、キリスト教伝来以前から土着の文化として存在した、古代ヨーロッパのゲルマン民族やバイキングのお祭りが起源です。夏至祭は移動祝祭日のため、毎年6月末の金・土・日曜日の週末が休みになります。家族や友達とサマーコテージに出かけ、かがり火を焚いてサウナに入り、新じゃがやスモークした魚などを食べてゆっくりと日の沈まない夏の夜を楽しむのが、現代の典型的な過ごし方です。サマーコテージは主に海沿いや湖畔に建てられ、その多くがプライベートビーチや飛び込み台を所有しているので、食事の前後にサウナに裸で入って、海や湖にも裸で飛び込むのが基本です。よくテレビで紹介される光景です。サマーコテージではバーベキューや魚釣りのほか、カヌーやサップなどウォータースポーツを楽しむのも、一般的な過ごし方として定着しています。夏至にはミッドサマーポールを村人大集合で立てること。村でいちばん大きな広場に行き、長さ30mにもなる巨大なミッドサマーポールと呼ばれる大きな柱を立てるとお祭りの始まりです。ポールが立つと一気に歓声があがり、音楽隊が陽気な音楽を奏で始め、老若男女がポールの回りで輪になって、夜通しお酒を飲みながら踊り、愉快な宴を続けます。日本の御神輿と似たような感覚かもしれません。テーブルにはニシンの酢漬けやマスタード漬け、サーモンなどが並べられ、ワインやビールもたくさん用意します。冬至と同様に夏至の夜は、古来から神秘的かつ超自然的なものと結びつけて考えられてきました。夏至を過ぎると、再び日が短くなり、夜が長くなっていくので、悪い精霊があたりを歩き回き、家のなかに入ってきたりして悪さをすると信じられてきました。かがり火を焚く理由はそのためで、かつては夏至祭のあいだはかがり火を絶やすことなく焚き続け、悪い精霊を追い払うとともに、豊作を願ったそうです。日本で灯明や線香を焚く感覚に似ているかもしれません。財産や結婚を占う古いおまじないも多く、未婚の女性が夏至の夜に枕の下に7種類の花を置いて寝ると、夢で将来の夫に会うことができると信じられています。
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