甲子仏滅の日



本日は干支の甲子(きのえね)という60日周期の第1日目です。とくにめでたいということではないと思われるかもしれませんが、この日は、七福神の一つである大黒天の縁日にあたり、大黒天を祀っている寺社では甲子祭が開かれます。大黒天は、金運、商売繁盛、縁結びなどのご利益があるので、参拝してお願いごとをすれば、夢が叶う可能性大です。ご近所の大黒天が祀られているお寺があれば、ご参詣するのもよいでしょう。甲子の日は六十干支の始まりであることから、この日から始めたことは良い流れを持ち続ける、この日に行動を起こすと運気の流れが良いなど、縁起が良いとされています。

仏滅は六曜の中では大安とともに広く知られる日です。全てにおいて凶とされ、特に結婚式などのお祝いごとは縁起が悪いので避けるのが良いとするのが一般的です。あれ、甲子の日と反対の忌日ですね。そもそも仏滅は初めからこの漢字があてられていたのではなく、「虚亡」→「物滅」→「仏滅」と変化して今の仏滅の表記になったといわれます。この「物滅」の字から、「あらゆる物が一旦滅んで、新しく物事が始まる」、ひいては「仏滅はなにか物事をはじめるには良い日である」という解釈もあります。反対の解釈もあるのです。こういう伝統的な行事や由来には、それぞれ解釈があり、ある意味、都合よくできています。これは生活の知恵というか、日本の融通無碍の文化であるともいえます。

干支や六曜は、明治政府としては迷信として排除したかったのでしょうが、理想とした西洋の習慣にも多くの迷信が存在していることには想いが至らなかったようです。いわゆる贔屓の引き倒し、であったわけです。実際、これらの「迷信」がすべて明治以降になくなったかというと、その逆で、今も気にする人々がたくさんいます。本気に信じてはいなくても、「わざわざ縁起の悪い日にすることはない」と考える人がほとんどです。この縁起に相当するのが英語のjinxと考えられそうですが、英語のジンクスは否定的な場合しか用いません。そして決定的に違うのは、英語のjinxは名詞でも使いますが、主に動詞で使われる点です。意味は「悪運を呼ぶ」ということで、日本語のジンクスは名詞のみであることと用法が違います。たとえば、This project is jinxed.(このプロジェクトは呪われている。)

I didn’t wanna jinx it.(ツキが悪くなるような事はしたくなかったんだ)のような語法はなかなか翻訳できないのではないでしょうか。I’m jinxed.は「悪運がついた。」という意味です。このjinxという綴りも何か不思議な感じがしますね。語源は魔術に用いるキツツキ類の名をさすギリシャ語に由来するのだそうですが、はっきりしていないようです。西洋の迷信として有名なのは13日の金曜日ですが、これはキリスト教との関連です。他にも「はしごの下を歩いてはいけない」「鏡が割れると不吉」「黒猫が前を歩くと不吉」など、日本でも知られているものがあります。これらの迷信は小説などに出てくるので、文学好きの人は詳しいと思います。くしゃみをすると、すかさずBless you.という習慣も迷信から来ています。迷信も文化の1つなのです。

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