「なぜ」を問うてみよう 3


ニュートン

「なぜ」という質問は哲学的な存在論のような高尚な疑問もありますが、素朴な疑問であることも多いのです。とくに子どもは大人ならもたない疑問をもつことがしばしばあります。たとえば「どうしてお腹がへるの?」という疑問があります。こういう内容の歌がありますが、その結論は「かあちゃん、お腹と背中がくっつくぞ」というオチになっています。つまり空腹の原因やメカニズムを知りたいのではなく、お腹がすいた、ということを訴えたいわけです。疑問というようより、要求なわけです。現状に不満があって、それを満たしてほしい、という要求があったり、納得できない場合にも「なぜ」という疑問を発します。大人でも、誰かにいじめられたり、うまく行かない時など、「なぜ、こんなことされるのだろう」とか「なぜ、うまくいかないのだろう」と思います。そして誰かに相談したりします。その時、相談相手は回答を出すのではなく、相談者の意見を聞いてあげて、いいたいことを言わせる、すべて不満を吐き出させることに注力します。この場合も、相談者は回答がほしいのではなく、不満を消化したいので、相談しているわけですから、不満が解消されれば質問の目的は果たせたわけです。

実はこの満足感を得るという目的は学問の基礎ともいえます。なぜ、という疑問を持った学者は、いろいろ研究して、まず自分なりの満足を得ます。そして次に仲間や専門家同士で議論し、他人が納得してくれれば、学問的には成功といえます。そしてその論理や研究を広く社会や国際社会に広めることで、みんなが納得してくれれば社会的評価が得られます。そしてそれが社会で実際に使われる、つまり社会的実装が行われて、社会的な貢献が認められるようになると、いろいろな賞が与えられるようになります。学者というのは真理の探究や技術の現実化が目標なので、実は学会のような仲間内で認められれば、それで満足することが多いです。とくに理論を追求している学者はそうです。「そんな研究をして何の役に立つのですか?」という質問がよくなされるのですが、役に立つことは研究成果の二次的な成果であり、まず理論の完成と専門的評価が大切なのです。その出発点は「なぜ」という素朴な疑問です。あの有名なニュートンの「なぜ、リンゴの実が落ちるのだろう」という素朴な疑問から重力という考えを思いついたというエピソードは有名です。世間は「そんなことは当たり前」として疑いもしないところを、なぜ、という疑問を持ったところが彼の天才的な由縁という説明の寓話になっています。科学的にはニュートンが提唱したのは、重力の発見というよりも、二つの物体の中心のあいだに働く引力は距離の二乗に逆比例するという万有引力の法則を発見したことにあります。天体の惑星の運動も地上の物体の運動もすべて共通の原因である万有引力の法則に従っており、一切の自然現象の根底に働く引力の発見によってニュートンは古典力学(ニュートン力学)を確立したことが科学として重要な基礎を築いたことにあります。彼は他にも万有引力・微積分法・光のスペクトル分析は、ニュートンの三大発見とされています。

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