語呂合わせ 1



日本語は同音異義語が多いので、語呂合わせで遊ぶ、ことば遊びが盛んです。同じ語呂合わせでも職場で中年男性が言うとオヤジギャグとなり、文学では韻を踏む、といわれ、歌にするとラップといわれる、価値観が変化する言語現象です。CMでは語呂合わせが頻繁であり、商品名などにもよく使われる言語技法です。

語呂合わせには肯定的な内容の場合と、否定的な内容があることはあまり分類されておらず、おもしろさだけが強調される傾向があります。たとえば、政治家や役人が「検討させていただきます」を連発すれば、遣唐使をもじって検討使と言われるとか、弁護士が弁当の手配をさせられているので、弁当士というあだ名がつくなどが、否定的な内容の例です。

こういう語呂合わせは、おもしろさだけでなく、インパクトがあって記憶に残りやすいので、学習に用いられることも頻繁にあります。歴史の年号覚えはその典型で、1192年をイイクニとして覚えた経験はだれにもあります。数学のような一見無味乾燥に見える分野でも、π(パイ)つまり円周率を語呂で覚えたり、平方根を語呂で覚えるなど、記憶の手がかりとすることはかない多いのです。化学でも元素の周期律を語呂で覚えたはずです。実はこうした語呂をどのくらい知っているかで、その方面の知識があるかないか、そういう学問を勉強した経験があるかどうか、までわかってしまうので、ある意味、恐ろしい効果があります。とくに受験時代は学習塾あるいは参考書などでは、こうした語呂合わせ記憶術が多用されるので、そうした記憶はいつまでも残っており、受験を経験した人々と経験していない人々の差別化になります。昔の経験を懐かしがる場合の共通の話題になりがちです。

受験時代だけでなく、昔の大学生もそうした勉強方法が多用されており、たとえば「デカンショ節」という歌の起源がデカルト、カント、ショーペンハウエルの頭文字をとったもの、というまことしやかな嘘を知っているのは特定の世代の人々です。この時代にはこうした哲学の古典を学ぶことが常識形成の基盤と思われていたので、共通の話題でもあったわけです。現代は古典哲学を学ぶ人が激減しているので、デカンショと言われてもどこがおもしろいのかがわかりません。しかしyoasobiや緑黄色社会のような歌手名にも語呂合わせが使われており、そちらには馴染みがあります。

近年はアルファベットを用いた語呂合わせも増えてきて、AKB48などのシリーズ化したネーミングの他、ダイゴによるローマ字表記頭韻語も何人かがマネするようになっています。語呂という語の語源は「「語呂(ごろ)」とは、言葉や文章の続き具合、調子 のことで、もともとは 雅楽 における 旋法 に由来する。 曲の調子を「律呂(りつりょ)」または「 呂律 」(りょりつ、ろれつ)といい、うまく演奏を合わせられないことを「呂律が回らない」と言った。」(wikipedia)で、由来は古いのです。言葉のつながりが調子よい、ことから来ていて、調子が良い、というかことは心地よい、ということです。なぜ語呂が心地よいのか、という脳科学の研究もあるようで、母音が関係していることがわかっています。

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