語呂合わせ 2



語呂合わせは記憶に残りやすいので、政治的なプロパガンダにも多用されます。時にはそれが行き過ぎて誤用になることもあります。

たとえば、最近、ダイバーシティという用語が頻繁に出てきます。これはdiversity(多様性)に都市cityを混ぜ合わせて、英語ならdiver-cityとなるので、誤用のリスクはありませんが、日本語では混乱が起きます。日本語でダイバーといえば、潜水士ですから、ダイバー・シティとすれば「潜水士市」ということになります。もじっても「潜水市」でしょう。しかし日本人はそういう感覚がないので、スマートシティsmart cityのような都市構想と一緒にされると、混乱が起きます。こうした危険は英語の他のシティで終わる語、たとえばパブリシティpublicityやデンシティdensityでも起こります。中途半端な英語の知識を濫用するとそうなりがちです。語感として調子がよいように見えて、居心地の悪い違和感を持つ人もでてきます。これはオヤジギャグと似たような現象で、言った側はおもしろいつもりでも、聞いた側は「サムー」という状態になるのと同じことです。簡単に言えば独善的、独りよがり、ということです。

漫才や落語のような芸の世界でも、語呂合わせが頻繁に用いられます。漫才のような新作の場合は、その語呂がウケル場合もありウケない場合もあるのですが、落語の語呂は地口と呼ばれオチにも使われ肯定的に受け止められています。この差は観客側の納得度、感触の差です。つまり、おもしろさ、というのは普遍的であることは少なく、人によって受け止め方、感じ方が違うわけです。それが多様性、つまりダイバーシティです。普遍性と多様性は対立的概念で、相互に排他的、つまり正反対の概念であり、混じりようがありません。この違いを認識しておかないと誤用になりかねないのですが、近年は多様性を強調するあまり、誤解と誤用が広がっています。

多様的という形容詞はdiverseでディバース、ダイバースどちらの読みもあるのですが、いつからか名詞形のdiversityはダイバーシティとして定着しているのはアメリカ英語の影響かもしれません。対語はuniverseですがuniversityは大学として定着しているので、日本式カタカナ英語だと混乱が起きます。ユニバースは宇宙と訳されるのが普通です。大阪の遊園地ユニバーサル・スタジオは映画会社の社名がユニバーサルつまり宇宙的というネーミングの会社の映画スタジオが遊園地化したものが日本に輸入されたものです。しかし現代の日本で大阪のユニバーサルが宇宙だと連想する人はいないと思いますし、まして大学との関連は連想しないと思います。Universalの名詞形としてuniversityが先に大学になってしまったので、universalの普遍的という意味の名詞形はuniversalityという派生形になっています。日本語では普遍性と訳しています。日本語の方は普遍的、普遍性という派生をしているので、その原理からすればuniverseは普遍となるはずですが、現実には変則的で、universeを普遍と訳すことは稀有で、宇宙の方が広がっています。何が言いたいかというと、語の派生や広がりは言語によって違い借用語は要注意と言う例です。

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