語呂合わせ 3



語呂合わせは同じ言語内ではおもしろさ、として広がりやすいのですが、言語をまたがると誤用や誤認の原因となりがちです。政府の御用で作った用語が誤用になっては洒落になりません。

語呂は母音の反復もしくは類似を利用するので、子音は無視されることがよくあります。日本語は文字上、母音が5つなので、同音異義語が発生しやすく、さらに語呂合わせがしやすい言語です。英語の場合は英語の母音は短母音7つ、長母音4つ、複合母音5つの計16個というのが定説です。従って、英語から日本語に借用すると、どうしても重なりが増えます。さらに子音を無視すればその数は相当なものになります。たとえば英語のcoat, courtがコートとなり、boat, voteはボートになります。とくにr, lやb, vの違いが無視されて、同音異義語がたくさん作られています。たとえばrock, lockなどです。ときどき使われる「デッドロック」はdead rockなのかdead lockなのかが不明で、「デッドロックに乗り上げる」という表現が日本語では使われますが、英語のデッドロックはdead lockつまり「壊れて動かない錠」の意味ですが、日本語では「暗礁に乗り上げる」という表現の意味で使われています。知ったかぶりの「知識人」誰かが誤用したものがそのまま広がった例といえます。ロックはrock, lockのどちらも多用されるので、日本語に借用すると混乱や誤用しやすい語です。英語では異なる母音の語が日本語に借用されて同音語になった例は枚挙にいとまがなく、それだけで辞典ができるほどです。ロッカーがrocker なのかlockerなのか。日本語ではロック音楽家をロッカーというようですが、英語ではrock musicianです。これでは和製英語が英語として通用しにくいのも無理はありません。アイ・アム・ロッカーといえば怪訝な顔をされるのは当然です。さらにそれが日本語の語呂合わせに使われるとさらに混乱が増えます。「ろっか」という同義語はかなりあり、六花、六課、六科、六価などと混乱しないとよいのですが、どうなのでしょう。

こうした同音語、類似音語による誤用は日英語だけではなく、欧米でも起こります。たとえば有名なシンデレラのガラスの靴ですが、元は皮の靴という当たり前のことだったのがガラスに誤訳された、という有名な雑学があります。どうして皮の靴がガラスの靴になったのかというと、フランス語で皮は「vair」、ガラスは「verre」であり、発音はどちらも「ヴェール」です。この単語が英語に翻訳される際に、本来は「皮の靴」となるところを、間違えて「ガラスの靴」に翻訳されてしまった、ということなのです。そしてディズニー映画で画像化され、すっかり洗脳されてしまい、現在に至る、というわけです。欧米の言語は日本語ほど同音異義語が多くないので、訳者はそれほど注意を払わないので、語訳される可能性はより高いといえそうです。日本語は同音異義語が多いので、訳者は注意を払うのが普通です。そのため、同じ語に多くの訳が生まれてしまう、という側面もあります。ユニバースの訳語が多いのもそのせいといえそうです。

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