やまとことば⑨ する・やる2



「する」も「やる」も英語ではdoに該当するので意訳するしかありません。というよりも日本語は名詞中心言語で、英語は動詞中心言語なので、英語なら1語になっているものを、名詞に「する」をつけて動詞化して対応させているわけです。たとえばcopyはそれだけで名詞も動詞もあります。日本語だと「コピー」は名詞なので、「コピーする」にするか、「コピーを取る」のように名詞を目的語にして、意味的に適合しそうな動詞を当てます。しかし英語ではcopyを名詞にするにはa copyやcopiesのように冠詞とつけたり、複数化します。そして動詞にする場合は、目的語を後に配置します。「コピーして」はCopy it.となります。つまり文法が異なるわけです。こうした言語の文法的な違いに加えて、doには「する」と「やる」の違いがありません。英語のdoは動詞の他に、助動詞もあり、疑問文や否定文、強調文に使われることはご存じの通りです。文法的な働きがまったく違うのです。その意味では「対応させている」という説明は正しくないかもしれません。意味の一部が重なっている、程度の対応でしかないのです。ところがこういう難しい部分が英語の時間の最初の方にでてきます。助動詞は英語と日本語では、まったく意味も位置も機能も違うので、本来ならもっと後の方になって出てくるのが正しい教育法でしょう。

それはbe動詞についてもいえます。なぜこうなったかというと、「英米人にとっては、基本的な文法であり、これが英語の基礎」と考えた英米人教師が教科書とカリキュラムを作ったからです。英米人の感覚からすると、彼らに身近な外国語はフランス語やドイツ語などのヨーロッパの言語であり、語彙はよく似ているので、ある程度推測ができますから、「基本文法」さえ学習すれば、簡単に使えるようになります。このことは日本人が英語を学習してから、フランス語やドイツ語を学んでみると、その類似に驚きます。あまり日本では知られていませんが、「日本人は英語みたいなフランス語を話す」「英語みたいなドイツ語を話す」という印象をもたれています。それは当然のことで英語が第2言語、独仏語は第3言語だからです。日本人で「英語は苦手だが、ドイツ語なら流暢」という人は留学経験がある人を除けばほとんどいないと思います。独仏語ができる日本人は英語もできますが。現実として、大学で英語を教えている先生で独仏語を専門としている人がかなりいます。逆に英語の先生で独仏語を教えている先生は稀有です。これは言語の市場性の問題もあり、やむをえない点もありますが、いびつな分布になっていることは事実です。

話を「する」「やる」に戻しますが、「勉強する」「勉強をする」「勉強をやる」「勉強やる」のうち、どれがしっくりくるでしょうか。この判断は多少、個人差があります。統計をとれば数値的に差はでますが、どれかがゼロになることはないでしょう。ところが「勉強」を「強奪」に入れ替えると、数値は大きく変わることが予想されます。「強奪やる」はごく少数でしょう。では「強盗」ならどうでしょう。こういう入れ替え作業によって、意味の違いがだんだん掴めるようになります。

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