やまとことば⑩ する・やる3



「やる」と「する」の違いの意味分析は国語学でも進んできていますが、活用というか語形変化のパターンが違うことの理由はあまり研究されていません。「やる」は「やらない、やります、やる時、やれば、やれ」と活用します。つまり「や」が語幹つまり変化しない部分で、「ら、り、る、る、れ、れ」の語尾が付くわけです。しかし「する」の方は「しない、します、する時、すれば、せよ・しろ」と語幹はなく、全体が活用します。ある意味、変則的な活用なので、「サ行変格活用」略してサ変と習います。しかし、なぜそうなるのかという説明はない、と思います。ある意味、理不尽です。それで文法が嫌いになる人も多いと思います。納得がいかないことを、ただ覚えろ、というのは教育としてはどうなのでしょう。そしてこれが外国人が日本語を学ぶ時の高いハードルなのです。試しにcopilotに尋ねてみました。回答は「サ行変格活用が存在する理由は、日本語の歴史的な発展と関係しています。「する」という動詞は、古代日本語から現代日本語に至るまで、非常に頻繁に使用される動詞の一つです。そのため、他の動詞とは異なる特別な活用形が発展しました。「する」は、もともと「す」という形で使われていましたが、時代とともに「する」という形に変化しました。この変化の過程で、他の動詞の活用形とは異なる独自のパターンが確立されました。これがサ行変格活用の起源です。このような特別な活用形があることで、「する」を含む多くの複合動詞(例:勉強する、運動するなど)が効率的に使えるようになっています。」どうですか?納得がいきましたか。要するに「す」から「する」に歴史的変化があり、独特の活用形になった、という説明です。ちなみに古語「す」の活用は「せ、せ、す、する、すれ、せよ」ですから、少しだけ規則的です。現代語で仮定形というのを古語では已然形といいますが、意味はほぼ同じです。これでもまだ不規則な感じがしますが、以前のように音素に分解、つまりローマ字で書くと、se, se, su, suru, sure, seyoでsだけが語幹と考えると、語尾変化は他の動詞ではどうなのか、に興味が湧きます。古語の活用を知るには、古代日本語の母音がイ段、エ段、オ段でいくつかの音節が二通りに区別されていて、甲種、乙種と名付けられている、という基礎知識が必要になります。「昔の音がどうしてわかるのか」という疑問が湧くのは当然です。それこそ長い日本語研究の成果の1つです。万葉集など古代の文献では、おおよそ1つの音に1つの漢字が割り当てられています。そこから古代の音が推定できるわけです。そしてその名残りが今でも「お、を」や「え、ゑ」「い、ゐ」のように残っています。古代日本語は5母音でなく8母音だったのですね。こうした知識を元に古代日本語の活用分析をした研究があります。(佐藤正彦2013)(http://jgrammar.life.coocan.jp/ja/data/verborg.htm)さっと読んでわかるようなものではないのですが、詳細に検討しており、活用がどのように変化していったかという推論として優れた論文です。こうした実績を古文の時間に紹介するだけでも、古文に興味を持つ若者が増えるでしょう。

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