やまとことば⑲ ~て動詞3


て動詞

テ形動詞の「~ている」を考えてみましょう。「~ている」表現は 時間の流れの中で、どの部分に焦点をあてるかによって、意味が変わります。次の例文を考えてみます。

①「(まだ)食べていないの」②「(いま)食べている」③「(もう)食べている」では、「食べる」という行為がどこの時点なのかが変化します。①は食べる行為の前、②は食べる行為中、③は食べ始めて時間が経っている、ことを表します。( )内の副詞によってより明確にその違いが示されます。このように、ある動きが全体の時間の流れの中で、どの段階にあるのかを考えるという意味を文法では「アスペクト」と言います。学校では習わないやや高度な文法ですが、アスペクトとは、 動作の段階や時間を述語によってあらわす文法形式・比率・角度 ことです。 アスペクトには大きく分けて次の3つの意味があります。1動作の進行状態を表す意味、2動作の完了状態を表す意味、3動作の繰り返しを表す意味です。英語の時間に現在進行形、現在完了形などを習いましたが、あれはアスペクトだったのです。ただbe+ing, have+ppのような形だけ覚えさせられて、嫌になった人も多いと思います。日本語のアスペクトは、この例のように、テ形動詞の変化で表わされることが多いです。金田一春彦は動詞を次の4つに分類しました。(1)状態動詞:状態を表す。「~ている」の形にならない。(2)継続動詞:ある時間内続いて行われる種類の動作、作用を表す。「~ている」の形になり、「動作の進行中」であることを表す。(3)瞬間動詞:瞬間に終わってしまう動作、作用を表す。「~ている」の形になり、動作、作用が終わって、「その結果が残っている」ことを表す。(4)第四種の動詞:時間の観念を含まず、形容詞のように、その物事の様子、性質、形状、印象を表す。常に「~ている」の形で用いられる、いいます。しかし現在では「継続動詞」「瞬間動詞」より、「動作動詞」と「変化動詞」という場合が多くなっています。さらに(1)動きのある動詞(食べる、走る、など)と(2)動きのない動詞((ある、いるなど)に大別し、そして(1)が動作動詞(食べる、走る)と変化動詞(消える、壊れる)に分かれ、(2)が状態動詞、という分類がわかりやすい、という議論もあります。他にも分類法の提案があり、専門家の間でも意見が分かれているのが現状です。ちょっと頭が痛くなってきました。要は一口に動詞といっても、英語と日本語では分類法が違うのですが、日本の国語教育では、ほぼ専門知識を習いません。しかし成人になってから、改めて日本語を研究してみると、いろいろ奥深い意味がわかってきます。そういう文法知識を得ると、日本語の使い方、正しい日本語とは何かということに対する回答が得られます。若者の日本語がおかしい、という前にまず勉強です。

ところで8月2日は「パンツの日」だそうです。今の日本語では昔、ズボンと言っていたのが、スラックスに変わり、今はパンツ(アクセントが変わります)となって、同音異義語となったので、混乱を起こす結果になりました。「パンツの日」は下着の方の話なので、今回は避けました。

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