マンション



日本語に入り込んだ外来語は多いのですが、中には意味がまったく変わってしまった語もたくさんあります。これらの借入語は誤訳というよりも、日本独自で進化した日本英語、和製英語と考えるのが正しい理解だと思われます。こういう日本独自の言語進化は和製英語の前にも和製ポルトガル語もあり、古くから和製漢語がたくさんあります。

マンションといえば、高層の集合住宅のことですが、語源は英語のmansionから来ています。英語のmansionは邸宅の意味で、それも日本の邸宅よりもはるかに大きなお屋敷のことです。ディズニーランドのホーンテッドマンションはお化け屋敷ですが、あれくらいの規模の家で、しかも個人住宅です。広大な敷地が原則で、トランプ氏のトランプタワーは個人所有でもmansionではありません。フロリダにあるMar a Largoは正にmansionで、敷地内にゴルフ場があります。ニューヨークにはそんな広大な土地はないので、彼はフロリダに自宅をもっていて、専用ジェットで通います。そのジェットも日本人がそうぞうする小型ジェットではなく、大型のジェット機です。それで選挙演説会場に行くのですから、桁外れですね。日本の首相は税金で購入した公用車ですから、どうしても発想がせせこましくなるのもやむをえないのかもしれません。

日本で言うマンションは英語だとapartment houseです。あるいはcondominium略してcondoです。例の「ハワイのコンドミニアム」というのはリゾートマンション(これも和製英語)のことです。またワンルームマンションという語義矛盾のようなスタイルが日本では流行りですが、あれはstudioです。「一部屋屋敷」はおかしいですよね。もう1つduplexというタイプの集合住宅もあります。上下二階になっているタイプです。日本の二階建て連棟住宅に似ています。こういう借入語は過大広告のように思えるのですが、不動産業界では当たり前ようで、アパートをコーポと言い換えたり、ビラとかメゾンとか、とかく外来語でごまかそうとしているような感じがしてなりません。

同じことは官僚のカタカナ語にもいえます。日本語で表現すると何か不都合があるのかと推測したくなります。このカタカナ語濫造は今に始まったのではなく、英語の前は漢語でした。その悪弊は今でも医学界に残っていて、医学用語がやたらむずかしい日本語になっているのは、その名残りです。漢語の場合は、特殊な漢字でないかぎり、意味がなんとなく想像できるので、まだマシですが、カタカナ語は連想できないのが難点です。ところがカタカナ語は意味がわからないだけでなく、勝手に造語するので、元の意味からさらに離れていきます。その典型がワンルームマンションです。そして頻繁に出てくるグローバル・スタンダード、これも和製英語です。世界共通規準というような意味で使われていますが、アメリカ人はアメリカ文化が世界規準と思っていますから、スタンダードといえばアメリカ規準のことで、わざわざグローバル(地球的)とはいいません。日本では「日本は遅れている」ので、世界標準に合わせることが是と考える人々の造語です。

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