自動車部品



日本英語の典型例として、自動車関連の用語があります。自動車製造は日本の基幹産業でもあり、輸出の主力でもあるのに、用語が日本独自の日本英語なのは謎です。それこそ国際的に使用されている用語に統一しそうなものです。たとえば、車のエンジンをカバーしているフロント部分の「蓋」をボンネットと言っています。しかしアメリカではフードhoodといいます。ボンネットはbonnetが語源でイギリス英語です。ボンネットとは帽子のことで、女性や赤ちゃんなどがあごを紐で結ぶタイプの帽子です。英国の用語ではフードとは乗員が搭乗するキャビンの屋根に被せられた布製のカバーのことを示します。この用語には自動車開発の歴史が関係しています。1930年代から1940年代までに作られた自動車では、キャビンの屋根であるフードとエンジンルームの蓋であるボンネットは構造上もその機能的な位置づけも類似していて、悪く言えば両者ともただの覆いに過ぎない存在であったため、必要に応じて開閉と同時に取り外すこともできました。近代的な自動車では、両者は覆いという元の目的そのものは同じであるものの、空力特性の改善、キャビンの気密性の向上、エンジンルーム内の保温性または排熱性などの様々な機能性を持たせるために、ボディと一体化して特化した機能性を持つ存在となり、もはや両者は構造上の類似性が見られなくなりました。現在ではセダン型にはこのボンネット・エンジンフードがついていますが、いわゆるワンボックスタイプではキャブオーバーといい、エンジンルームを覆う蓋がありません。このワンボックスカーというのも日本英語で、世界的にはvanまたはminivanと呼ぶのが普通です。日本でバンというと商用のイメージがあります。貨物保護のため箱型の荷室を持つボディを架装し、積載性を優先させた商用車をバン、それを居住空間として定員数の増加や快適性に振った乗用車をワゴンと定義されているようです。そこでマスコミではワンボックスカーとはいわずワゴン車という表現が一般的です。呼び名は自動車メーカーごとにさまざまです。正式には商用車ではボンネットを持つ2ボックススタイルのライトバンとの区別、乗用車ではセダンベースのステーションワゴン・エステートワゴンとの区別のため、ワンボックスカーと呼んでいるのだそうです。ある意味、日本で「ガラパゴス的に」進化していった自動車用語のようです。他にもバックミラーは日本英語で英語ではrear-view mirrorといいます。ハンドルもsteering wheelといいます。英語のwheelは車輪のことです。船の舵を舵輪といいますが、同じ英語です。たまに英語のクイズに出るのですが「自動車に車輪はいくつありますか?」というのがあります。答えは5つですが、アメリカ人も普段は四輪しか意識していないので、誤答もでます。英語のsteeringは操舵という意味で、そこからsteering committee といえば「運営委員会」という意味になります。日本では単にステアリングということもあります。車の後部にトランクはアメリカとは共通ですが、他の英語圏ではブートbootです。靴のブーツbootsと同じ単語です。ややこしいですね。

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