社会の語源



「社会」という言葉は、日本語においては比較的新しい概念です。もともとは西洋の「society」という概念を翻訳するために導入されました。西洋のsocietyの起源はラテン語のsocietasに由来します。この言葉は「仲間」や「連帯」を意味し、ラテン語の「socius」(仲間、同盟者)から派生しています。中世ヨーロッパでは、社会という概念は主に宗教的な共同体や封建制度の中での人々の関係を指していました。現在でも教会や学会がソサエティを名乗ることがよくあります。日本への導入は、明治時代の翻訳語で、福沢諭吉らの翻訳とされています。日本において社会という言葉が広まったのは、明治時代の西洋文化の導入期です。福沢諭吉や西周などの知識人が、西洋の学問や思想を日本に紹介する際に、societyを「社会」と訳しました。その後、社会学という学問が発展する中で、「社会」という言葉は学術的にも一般的にも広く使われるようになりました。 現代の「社会」の意味は、多様な意味合い:があり、「社会」という言葉は、単に人々の集まりや共同体を指すだけでなく、経済、政治、文化など多様な側面を含む広範な概念となっています。学問的には言語と社会と文化は不可分の一体とする思想が日本では一般的ですが、日本以外では、それに宗教を加えて4つが一体である、と考えるのが一般的です。ときには民族を加えることもありまあす。むろん、現実は複雑ですべての要素が一致しているとは限らず、そのうちの3つであったり、2つであることもあります。いずれにせよ、これらの要素が国家を構成する重要な要件であることは確かです。近年のようにグローバル化が進む中では、異なる文化や国々の「社会」が相互に影響を与え合う現象も見られます。つまりグローバル化は世界的に統一方向に向かう傾向のことをいいますが、一方で現在のそれぞれの社会がそれぞれに主張しあうこともあり、世界がグローバル化に向かうこともあれば、反グローバルに向かうこともあり、現在の世界情勢はそちらに向かいつつあるようです。その証拠ともいえる現象が戦争であり、戦争は国と国、あるいは国内の政府と反政府勢力による武力衝突です。それは国家間あるいは国内の社会が分断されているということです。戦争の要因はいろいろあります。多くは領土問題ですが、たんに領土問題だけでなく、背景に宗教や文化の違いによる衝突が原因になっていることがほとんどです。社会には地域社会という言葉があるように、1つの統一社会があるわけではなく、地理的な状況だけでなく、言語や文化のことなる社会集団があります。また近代的な概念として、障害や性別、年齢といった「社会変数」によって分類される集団もあります。日本に強いのが学歴という社会変数による集団社会もあります。社会がいろいろあれば、大きな集団と小さな集団があり、力の優劣もでてきますから、マジョリティ、マイノリティという社会集団による軋轢も生じてきます。社会という概念はなかなか一筋縄にはいかない難しい概念です。とくに近代化によって複雑化すればするほど、分類も範疇も複雑化します。

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