寒露



暦の方は寒露となりますが、まだ寒いという実感までは至っていません。寒露は秋が深まり、空気が一段と冷たく感じられる季節です。この時期は、露が冷たくなり、草木に降りる露がまるで霜のように感じられることからその名がつけられました。寒露は、二十四節気の一つで、この時期は、秋の収穫が終わり、冬の準備が始まる時期でもあります。寒露の頃になると、日中はまだ暖かさが残るものの、朝晩の冷え込みが一層厳しくなります。自然界では、紅葉が進み、山々が美しい色彩に染まります。また、渡り鳥が南へと旅立つ姿も見られるようになります。寒露は、秋の深まりを感じさせる重要な節気です。寒露の七十二候は以下の三つです。

鴻雁来(こうがんきたる):
雁が北から南へ渡ってくる時期です。秋の空を飛ぶ雁の姿は、季節の移り変わりを感じさせます。

菊花開(きくのはなひらく):
菊の花が咲き始める時期です。菊は日本の秋を象徴する花であり、その美しい花が庭や野に咲き誇ります。

蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり):
蟋蟀(こおろぎ)が戸口で鳴く時期です。秋の夜長に聞こえる蟋蟀の鳴き声は、どこか物悲しさを感じさせます。

七十二候は自然観察という叙景なのですが、抒情的な風情もある表現がありますね

寒露の時期には、さまざまな風物詩が楽しめます。紅葉狩りはこの時期の代表的な行事です。山々が赤や黄色に染まり、その美しさに心を奪われます。また、秋の味覚も楽しみの一つです。栗や柿、サツマイモなど、秋の味覚が豊富に揃い、食卓を彩ります。あまり知られていませんが、寒露の頃には月見も楽しめます。中秋の名月は過ぎましたが、澄んだ秋の夜空に浮かぶ月は、依然として美しいものです。月見団子やすすきを飾り、家族や友人と共に月を眺めるひとときは、心を豊かにしてくれます。今では通勤の帰り道にふと月を見ることしかしませんし、中にはずっと月を見ていない生活をしている人も多いのが昨今の事情です。確かに忙しいと月などのんびり眺める余裕などないのかもしれませんが、実はそれこそがストレス社会であり、やがて病をえて、病床から月や風景を見るようになって、初めて気が付く人も多いのです。できれば、普段から自然の風景や月を眺めるようにすれば、「癒し」にもなり「整う」ことも多いはずです。その1つの目安として、昔の人は暦にこうした季節の移ろいを載せて、生活の潤いとしていました。こうした先人の智慧を学ぶ機会が旧暦の勉強だと思います。そして楽しみとして、いろいろな食べ物を楽しむ知恵も示されています。やたら時短料理とか手抜き料理法ばかりに関心をもつのもいかがなものでしょうか。寒露は秋の深まりを感じさせる重要な節気であり、自然の変化や季節の移り変わりを楽しむ絶好の時期です。七十二候に目を向けると細やかな季節の移ろいを感じることができます。寒露の風物詩を楽しみながら秋の美しさを存分に味わってみてはいかがでしょうか。

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