学位



英語のartsには広い意味があり、日本語はその都度訳語を変えています。たとえば大学院を出て修士号をえますが、この修士は文系ならMater of Arts, M.A.ですし、理系ならMaster of Science, M.S.です。厳密にいえばMasterが修士なので、直訳して「学芸修士」、「科学修士」としているケースもあります。ちなみに大学出つまり学士はBachelorでofの後に学部名がつきます。Bachelor of Artsは文学部の場合のみです。博士はDoctorですが、ofの後に専門分野をつける場合と、一般的にPh.D.と称されるDoctor of Philosophyは「学術博士」と訳されています。アメリカはほぼPh.D.で専門分野を付記することもあります。日本は文学、医学、法学、理学、工学が明治時代の1887年に定められ、1898年に薬学博士、農学博士、林学博士、獣医学博士が追加され、1920年に経済学博士、経営学博士、商学博士、政治学博士、神学博士が追加されました。そして戦後の1956年教育学博士、社会学博士、水産学博士、保健学博士(1969)、学術博士(1975)が追加されました。1991年以降は、括弧つきで専門分野を博士の名称の後ろに付記する表記になり、博士(医学)のように表記されるようになりました。そして学問分野はほぼ大学院名に対応して、数多くなっています。これは日本の制度で、学位は国ごとに定めが異なりますから、要注意です。一般論としていえるのは、博士号取得者はアメリカが圧倒的に多く、日本もそれに次ぐくらい多くなってきています。そのため、博士号をもっていても研究職に就けないという問題が浮上してきています。これは日本が高学歴化したことを示していますが、アメリカのような「飛び級」制度がないため、必然的に高学歴者の教育期間が長く、就業時期が遅くなり、若者の失業率はその分、低下しますが、晩婚化の一因にもなっていて、少子化問題とも関わっています。しかし、こうした議論はほとんどなされていないのが現状です。同時に、現在、偽造学位の問題があります。主に海外で、学位を審査・授与するに当たらないディプロマミル・ディグリーミルという機関が大学を称して、形式的な審査と料金を支払うことで、正式な博士の学位であるかのように学位記を発行する組織が存在します。アメリカでは、ディプロマミルを用いた経歴詐称が深刻であり、日本においても2004 - 2006年度で全国4大学に4人、「ニセ学位」によって採用・昇進した教員がいたことを2007年末に文部科学省が発表しました。このような問題を回避するためにも、学位の名称の使用に際しては授与機関名を併記しなければならないことが学位規則によって定められています(例:博士(医学)(東京大学))。日本の政治家の中には外国の学位を取得した、と経歴に書いている例が多く見られますが、中には大学名だけを書いていて、学位を取得したかどうかを明示していない例も見られます。入学しただけでは無意味で、1日でも在籍すれば中退となりますから、昔から、中退と書いて泊付けしようとしたり、最近はそれも省略してしまう例もあり、学位は明記しなければならない、という常識を広めたいものです。

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