終える、を考える
毎月30日が「みそか」で、旧暦ではこの日が支払い日です。現在では、月末のところもありますが、支払日もマチマチで、それぞれの企業が設定しています。そのため月末という意識も薄れてきています。そして「みそか」という語も死語化しています。
晦日が過ぎれば翌日は朔日(ついたち)ですが、この語もほぼ死語化しています。朔日は新月で、月が全部欠けている状態ですが、新月という言葉が示すように、ここから「新しい月」が始まる、めでたい日です。そこで「ついたち餅」などの行事が残っている地域もあります。「終わり」ということは次に「始まり」が来るという思想が日本古来の伝統でした。
仏教の輪廻転生という思想の影響もあるかもしれませんが、すべてのことに「終わり」があり、それは次への「始まり」という循環的な思想です。しかし欧米の思想は、「終わり」は、それで終わりであって、次の「再生」への「始まり」と考えることは滅多にないようです。
「終わり」を表す英語にはいくつかの表現があります。それぞれの意味やニュアンスには微妙な違いがあります。
End: 最も基本的な「終わり」を表す言葉です。時間的な終わりや物事の完結を指します。
例文 The end of the movie.(映画の終わり)。
Finish: 何かをやり遂げる、完了することを意味します。作業やタスクの終了を強調します。
例文 I finished my homework.(宿題を終えた)
Conclusion: 論理的または公式な終わりや結論を指します。特に議論やレポートの最終部分によく使われます。
例文 In conclusion, the study shows...(結論として、研究は…であることを示している)
Completion: 何かが完全に完了した状態を強調します。プロジェクトや計画などの完了を指します。
例文 Completion of the project.(プロジェクトの完了)
Termination: 正式または強制的な終了を意味します。契約や仕事の終了に使われることが多いです。
例文 The termination of the contract.(契約の終了)
Closure: 感情的または精神的な意味での終わりを強調します。特に喪失や困難な出来事の後に使われます。
例文 Finding closure after the incident(事件後の心の区切りをつける)のような用法になります。
どれも見ても、次にstartが来るようなニュアンスはなさそうです。西洋の思考は、「始まり」から「終わり」までが直線的で、時間の経過と同じように考えていることがわかります。日本の「終わり」の次に「始まる」がすぐ来るということは、循環的な思考方法だということがわかります。これは死生観という宗教の根本にも影響しており、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教のような一神教では、死の後は、長い時間が過ぎて、神の王国に入れるという思想であり、その際に「最後の審判」がある、と信じられています。その審判はまだまだずっと先ですから、永遠に魂はそこに向かって残る、という直線的思考です。仏教国では、輪廻転生という、死後は別の生き物になる、という螺旋状の継続であり、同じ魂の永遠性の主張にしても、形の違いがあります。年末で今年が終わるのですが、新年がすぐやってくる、というお迎えの気持ちがあるのも、日本の伝統といえます。
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