かき玉と玉子とじ


コラム挿絵:かきたまうどんのイラスト

冬になると、「かき玉」のうどんやそばがおいしいですね。うどんやそばの上を片栗粉でとじると、暖かさが持続して、寒い冬にはうれしい食べ物です。「かき玉」と「たまごとじ」はよく似ていますが、溶き卵を回しかけたものが、「たまごとじ」で、片栗粉の「あん」に溶き卵を混ぜたものが「かき玉」です。また「あん」だけをかけたものが「あんかけ」です。「たまごとじ」の「とじる」は「綴じる」という漢字になります。これは「本を綴じる」と同じく、なにかを「まとめる」という意味です。その意味からすると、かつ丼や親子丼も「たまご綴じ」の範疇に入るといえます。お店によっては、かつ丼のアタマとご飯を別にして、「カツとじ」と呼ぶ店もあります。正確には「カツたまごとじ」なのでしょうが、短く「カツとじ」なのは、綴じるのはたまご、という概念が広がっているからかもしれません。またかつ丼の進化系なのか、カキフライを綴じた丼もあります。親子丼は鶏肉と卵なので、そう呼ぶのでしょうが、豚肉を綴じた「他人丼」というのもあります。また鮭といくらを綴じた「親子丼」というのもあります。このあたりの駒かな拘りと変化形があるのは、いかにも日本文化という感じがします。B級グルメなのと、日常的な食べ物なので、外国人には話題になっていないため「世界文化遺産」の和食には入っていないみたいですが、今、外国人にブームの餃子やラーメン、とんかつなども元はB級グルメですから、日本通になったインバウンド客もそのうち目をつけるかもしれません。もっとも町中華には「広東麺」というあんかけラーメンはありますし、上海焼きそばは乾燥麺に肉野菜あんかけをかけたものなので、それほど珍しいものではないから、目につかないのかもしれません。名古屋にある「あんかけスパ」はスパゲティに、あんをかけたものですが、あんの味に店ごとの個性があり、それが名物になっています。片栗粉のあんをかけるのは、中華料理のカニ玉もあり、それをご飯に乗せた天津飯もあり、和食では茶碗蒸しに、あんがかかる場合もあります。あんの味は出汁に醤油などで味つけしたものが基本ですが、生姜を加えたり、柚子を加えたりした変化形もあり、それに伴い、かき玉うどんや、かき玉そば、に生姜を加えるものもあります。そもそも、うどんやそばのつゆにも違いがあり、出汁の種類や醤油の種類、砂糖の種類などの組み合わせがあり、店ごとに味が違います。生姜入りは身体が温まるので、好みの人もいます。このように、あんかけにも多くのバリエーションがあり、味にも店ごとの個性があるのは、店ごとの工夫が好きな日本の料理店の特徴で、日本文化の特徴でもあります。諸外国では、売れた商品は同じものがどこの店でも売っていて、ほぼ変わりがないことが普通です。いわばチェーン店のような同じ味が広がっています。日本でも外国系のチェーン店が広がることで同じ食べ物が普及していますが、それでも地域差をつけたり、添え物に違いがあったりと、個性を出す傾向が強いです。よく日本人の同調圧力が話題になりますが、こと食べ物に関しては、個性の主張が強いのが日本文化であるといえそうです。

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