言語技能測定技術と言語教育⑳ 学習・訓練法

語学にはいろいろな技法がありますが、需要も多いため、英語教育が最も進化しています。英語教育は、音声言語訓練ですし、文字による学習が主体ですから、手話にそのまま応用できるわけではありませんが、考え方は参考になると思われます。まず英語教育の思想と方法論は、自然法、直接法、伝統法に分けられると思います。手話教育の界隈でよく話題になるのが、ナチュラルアプローチNatural Approachですが、かなり誤解が広がっています。「ネイティブの表現をそのまま受け取って学習する」という理解のようで、「手話は聾者の言語」だから「聾者から表現を学ぶべき」という思想へと転換されて、広がっています。ナチュラルアプローチは自然法のことで、基本は「留学」です。言語習得は「幼児が自然に言語を習得する」ように、「人間は言語環境にあれば、その言語を習得する」という思想です。これは古代ローマ時代に発達したとされ、ローマ帝国の属国であった地域では、その地の豪族や支配者の子弟はローマに留学して、ローマの言語つまりラテン語を学ぶことが当たり前でした。帝国の言語であるラテン語を話し、ラテン語の読み書きができないと、地方政治は成り立たなかったとされています。この考え方は今も受け継がれていて、英語圏に留学して英語を習得することが日常的に行われています。本当はただ留学すれば誰でも習得できるわけではなく、現地でかなり努力しなければなりません。簡単な会話程度ならすぐに覚えられますが、実用レベルまで習得するには、現地で関連する職業についたり、丁稚奉公するなどの苦労が伴います。そのためには、留学前に基本的な知識や専門知識を身につけてからでないと、なかなか実用レベルまでには達しません。つまり言語環境とは社会環境であり、どのような社会に入るかで結果が大きく異なってきます。ダンサーやミュージシャンが本場で勉強する、料理人が現地で勉強する、などは「正しい留学」であり、言語だけでなく技術や思想も習得できます。よくある「英語学習のための留学」はあまり成功しません。「英語を習得して、何に利用するか」という目的がないと、会話程度で終わってしまい、それなら半年、せいぜい1年で終わりです。言い換えると、自然法は初歩的な言語学習には向いていますが、実用には向いていません。留学すれば、現地の言語環境は、周囲の人はほぼ全員ネイティブですから、コミュニケーションの必要から、会話はいやおうなしに覚えます。最初はチンプンカンプンであったのが、次第に「自然に」わかるようになり、その学習を続けていくわけです。一日何時間もそれに費やし、180日から360日も連続すれば、「誰でも」習得するのは「当然の原理」です。それにかかる時間と費用は相当なものです。これを日本でやろうとすれば、気の遠くなるような費用も時間もかかります。つまり自然法はコスパが極めて低い学習法です。しかし効果は確かなので、時間と費用という資本をかけて、学習することは悪いことではないのですが、限られた人だけになります。そこで、次にもう少しコスパが良い方法を模索することになります。
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