Smallpox(天然痘)
応保元年(1161年)長月九日 天然痘の流行のため永暦より応保に改元されました。昔は疫病が流行ると改元によって人心を一新しようということがよく行われました。日本に天然痘が入ったのは8世紀だそうですが、ウイルスにより感染するのですから、外国から入ってきたのでしょう。その後、このウイルスは定着し、人口密集度が高くなった江戸時代には何度も流行しました。疱瘡(ほうそう)とも呼ばれ、平安時代の『続日本紀』によれば、疱瘡は天平七年(735年)に朝鮮半島の新羅から伝わったとあるそうで、天平の疫病大流行と呼ばれています。原因がわからなかった昔は疱瘡は怨霊の祟りとも考えられ、あるいは疱瘡神(ほうそうがみ、ほうそうしん)という擬神化した悪神で、疫病神の一種であるとされました。疱瘡神は犬や赤色を苦手とされ疱瘡神除けの張子(はりこ)の犬人形や、赤い御幣や赤一色で描いた鍾馗の絵をお守りにすることもあったそうです。疱瘡の患者の周りには赤い品物を置き、まだ疱瘡にかかっていない子供には赤い玩具、下着、置物で疱瘡除けのまじないとすることもあったそうです。鯛に車を付けた鯛車という玩具や、猩々(しょうじょう)の人形も疱瘡神除けとされたそうです。疱瘡のときの赤い発疹は治った後が良いということや、赤が病魔を払うという一般の俗信があり、江戸時代には赤絵と呼ばれるお守りもあり、絵柄には源為朝、鍾馗(しょうき)、金太郎、獅子舞、達磨など、子供の成育にかかわるものが多く描かれました。八丈島に配流された為朝が疱瘡神を抑えたことで島に疱瘡が流行しなかったという伝説があるそうです。これらは迷信として片付けられそうですが、現代でも新型コロナの流行にアマビエという妖怪がちょっとしたブームになったりしましたから、医学が追いつかない時には何か超自然的なものに頼るのは同じかもしれません。実際、新型コロナもウイルスが原因というのは早くから分かっていたものの、ワクチンがなかなかできず治療薬もなかったので、3密防止とマスクという医学とは程遠い予防策がとられました。
天然痘を英語ではsmallpoxといいます。Poxというのはあまりなじみのない単語ですが、梅毒とか疱瘡などカサができるもの一般を意味します。Smallpoxは天然痘だけでなくアバタの意味もあります。昔は原因もよくわからなかったのと、どれも同じように伝染するので、同じように考えていたのでしょう。
1980年WHOは天然痘の世界根絶宣言をしました。以来これまでに世界中で天然痘患者の発生はありません。人類によって根絶された唯一の感染症です。少し話題になったサル痘monkeypoxは天然痘ワクチンで85%は予防できるそうなので、ウイルスがにているのでしょう。
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