手話の雑学1

9月1日から、欧米やその影響下にある国々では学年や企業の年度が始まります。その理由は農耕社会の季節労働に対応するためだと言われています。夏(6〜8月)は農繁期で、子どもたちが収穫や農作業を手伝うために休暇が必要だったからです。夏の終わりで、収穫が落ち着く頃に教育を再開するのが自然でした。ある意味、欧米でも昔は児童労働が当たり前だったのです。秋は気候や農作業が安定する季節で、勉学に適したタイミングとされました。その結果、学校側も9月始まりの学年スケジュールを標準化していったのだそうです。確かに「勉学の秋」ですね。そこで本コラムも今日から、手話の知識について勉強していただこうと思い、雑学的な内容も含めて、手話に関するいろいろな側面をご紹介していこうと思います。
まず、最初は「手話と身振り(ジェスチャー)はどこが違うか」という疑問についてです。実際に手話を学び始めると、「手話には身振りみたいな動きが多い」という印象をもつ人が多いのです。しかし、手話の先生の多くは「手話と身振りは違う」ということをおっしゃる人が多いので、生徒は疑問に思いつつも、その疑問を胸にしまうことになります。しかし『先生、手話と身振りはどこが違うのですか?』と問う生徒もでてきます。すると先生は『たとえば、日本語で「名前」という場合、手話ではこうします(<名前>の手話を示す)』と実例を示します。これで納得する素直な生徒がほとんどです。しかし、「あなたの名前は何ですか?」という例文を習う時、手話では<あなた><名前><何>という例文を手話学習の初期に習うのですが、<あなた>は指差しで身振りと同じです。むしろ相手を指差すのは日本文化では失礼にあたるので、心理的抵抗感があります。そこで先生は『日本語では失礼になりますが、手話では失礼にはあたらないのです』と手話文化について説明され、生徒もそういうものか、と納得します。そして、場合によっては<名前>という手話の語源を習うこともあります。この語源と手話形は関東と関西では違うのですが、教科書はほぼ関東形を載せています。関西地方の生徒はここで方言系があることを学ぶことになります。そして<何>という手話は、テレビタレントが「どんだけ~」とするしぐさと同じなので、違和感をもつ人もいます。この手話の語源を説明することはかなり少ないと思います。そして先生は『大切なことは、この時、疑問の表情をつけることです』として、手話における表情の重要さを教えます。確かに表情は重要ですが、それは日本語や英語のイントネーションと同じで、感情表現やニュアンスを伝えるためのコミュニケーション・ツールとしての重要性です。欧米人はコミュニケーションに身振りを多用しますが、手話では同じことを表情や動きで表現しますから、日本文化の中では表情やしぐさが大げさにみえるかもしれません。日本語も欧米の言語に比べると抑揚はかなり少ないですし、表情やしぐさもかなり控えめなのが日本文化です。その意味では、手話では表情を重要視するように指導することは正しいです。
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