手話の雑学25


手話で話す女性のイラスト

日本に英語教師としてやってきた英米人の中に、「生徒にバカにされている」というストレスを抱える人が相当いるのです。英語教師をしていると、そういうストレスを溜め込んで自信喪失になった外国人英語教師の相談に乗ることがしばしばあります。とくに必死に、英語を教えねば、と思う真面目な人がそうなります。そこでアドバイスとして「簡単な日本語を使ってみれば?」と助言すると、しばらくして「生徒たちと仲良くなった」と笑顔で報告してくれます。これは教師と生徒のコミュニケーションの問題を鮮明に示しています。

手話教師の中にも、同様に真面目に手話だけを教えようと、日本語禁止にしたりする人がいます。中には「聾者(ネイティブ)の手話が絶対」と教える人もいます。現実にはそういう先生はあまり好かれません。「日本語対応で、音声も使って、優しく教えてくれる先生」に人気が集まります。これは簡単な原理で、「先生が教えたいことを教える」のではなく、「生徒が学びたいことを教える」ことが教育の本質ということです。学校の先生より塾の先生の方が「よくわかる」というのはそういう原理に基づいています。それは制度にも関係しています。学校の先生は、教える内容が決められており、あるレベルまで教えることが義務付けられています。いわゆる「新幹線教育」といい、生徒を残したまま、走り去って行かざるをえない環境にあります。一方、塾の先生は「客商売」で、生徒それぞれに合わせて指導し、人気があることを求められます。生徒指導という技術は当然、塾教育が進化していきます。

手話教育現場でも、同じ原理が働きます。手話を習いたい生徒の目的はさまざまです。手話通訳者になりたい人もいれば、周囲の聾者と話したい、手話を趣味にしたい、手話を研究してみたい、など、いろいろあるのが普通です。それを「手話通訳者になるため」に限定すれば、当然人気は下がります。残念なことに、手話通訳者養成制度が行政によって始まり、補助金などによって行政が手話講座を開始した目的がそれでした。当初はそれしかないため、それなりの盛況になりましたが、その講座は短期間限定であり、しかも肝心の手話通訳者になるためのハードルを越えるに至らないため、受講者はそれぞれ手話サークルなどを結成し、各自の目的により、さまざまなサークルができていきます。それは自然な現象ですが、行政の側は予算というしばりがあるため、一定程度の受講者がいないと成立しませんから、講座は次第に減少していきます。減少の理由は、受講者の減少が直接原因ですが、行政の合併という制度変更も深く関わっています。以前は小さな行政単位、たとえば町単位であったものが、合併により都市化すると、地域は拡大し、そのため、講座などは中心部に集合されていきます。それまで近所の集会所にあった手話講座は、効率化のため、受講生が多い中心部だけになり、周辺部は廃止されていきます。手話サークルもそれにつれて廃止されていき、手話の普及も縮小化されていくことになります。

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