手話の雑学56

現状、ストーキーのような言語相対論の立場で、しかも新たな枠組みを提唱しようとする人は稀有です。このコラムの筆者はそういう希少な立場なので、枠組みが独創的であり、どうしてもわかりにくく、納得できる説明がわずかしかありません。そのため、日本語の例、英語の例などを比べながら、日本手話を考えるという、めんどうくさい説明になっていることをご容赦いただきたいと思っています。
新しい枠組みといっても、すべて新しく創造した用語で説明することは、さらにむずかしいので、言語学の用語だけは使用します。これは言語普遍論であろうと言語相対論であろうと共通に使用できる用語です。それがないと議論になりません。ただ専門用語なので、概念がむずかしく、ある程度基本的な知識がないと、理解もできず議論もできません。そこでどこまで易しく解説するかは研究者最大の悩みです。
だんだん混乱してきたかもしれませんので、ここらで品詞とは何か、という基本的な文法理論から再考してみます。もし、そういう知識がある方は飛ばしてください。これまで名詞とか動詞とかの文法用語を使ってきましたが、そもそも品詞とは何でしょうか。きちんと習った人は少ないでしょうが、品詞とは「文法という言語の“設計図”を理解するための基本単位」です。言葉を分解して観察すると、文がどうやって意味を作り上げているのかが見えてきます。まるで化学で分子を原子に分けて性質を調べるようなものです。言葉の性質や働きによって単語を分類したものともいえます。文を作るとき、すべての単語が同じ役割を果たしているわけではありません。あるものは「動く」や「する」などの動作を表し、あるものは「青い」「美しい」のように性質を表します。こうした性質や文中での働きによって、文法上のグループ分けをしたのが品詞です。
私たちは、なんとなく、品詞は世界の言語に共通と思いがちですが、外国語を学んでみると、いろいろな品詞があることに驚きます。これは世界の言語の文法にいろいろなタイプがある、ということです。日本人は英語学習の時間に、英語と日本語の違いが大きいことに、すぐ気が付き、それが英語嫌いになったり、メンドクサイと思う原因でもあります。ところがヨーロッパの言語は互いによく似ていますし、日常的に隣の国の言語に接するので、ある意味、外国語学習のハードルが低いといえます。それはつまり、語彙も似ているし、文法も似ている、ということでもあります。ヨーロッパ人がいわゆる「異言語」に接するようになったのは、植民地をもつようになったからです。それ以前にも、中近東のアラブやアフリカとの接触はありましたが、本格的に現地人を支配しようとすれば、言語コミュニケーションが必要になります。そこで支配対象の言語研究が必要になり、語彙だけでなく文法が異なることにショックを受けたのです。神が作った言語が同じでないことは「バベルの塔」伝説の間違いに気づいたわけです。
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