手話の雑学82

デフドッグ(Deaf Dog)は、聴覚に障害のある犬の総称で、人間と同じく、先天的なケースと後天的なケースが含まれます。静かな世界に住む彼らは、人間が音声で世界を切り取るのとは別の仕方で周囲を感じ取っていると考えられます。視線、動き、空気の振動、そして飼い主の表情と体の使い方など、いわば視覚重心のコミュニケーション圏で暮らしている存在です。また嗅覚に優れているので、人間ではほとんどコミュニケーションで使われることのない嗅覚が使われることもしばしばです。まず、デフドッグの特徴、原因、行動、生き方、そして共に暮らすためのコツを勉強してみましょう。どこから「デフ」になるのかというと、原因は大きく二つで、ひとつは遺伝、特に白毛で青い目を持つ犬種(ダルメシアン、オーストラリアン・キャトル・ドッグ、ボーダーコリーなど)では、内耳の色素細胞が育たず、音を捉える有毛細胞が機能しないまま生まれることがあります。もうひとつは老化や感染、外傷などによる後天的な聴力喪失で、人の難聴と同じく連続的なグラデーションがあり、「まったく聞こえない」のから「高音だけ聞こえない」などがあり、その違いでも生活の工夫は変わります。音の届かない世界で、どう世界を読むのかというと、デフドッグは、音がないからといって情報量が少ないわけではありません。むしろ視覚・触覚がよく働き、以下のような情報チャンネルを活用しています。
・視覚チャンネル:飼い主の手の動き、腕の角度、表情。これは人間の手話語彙に似たしくみで、犬が習得するのは「記号の形」より「動きのパターン」です。
・触覚チャンネル:床の振動や、軽く肩をトントンする合図。
・空気の動き:ドアの開閉や人の歩みがつくる風。聴覚の代替ではなく、むしろ一つの別のモダリティ(知覚様式)として世界を切り分けています。
こうしたマルチモーダル知覚は、犬的にはとても自然です。音声優位の世界に暮らす私たちのほうが、少し概念の枠を広げて考える必要があります。デフドッグの行動の特徴として、行動として特に目立つのは、後ろから触れられると驚きやすい、飼い主の姿が見えなくなると不安になる、視線が常に周囲の動きを追っているなどです。しかしこれらは「問題行動」ではなく、周囲の世界とつながるための、彼らなりのセンサー調整です。また、音に反応しない分、視覚情報に敏感になるため、手の合図(ハンドサイン)を使ったトレーニングが非常に効果的です。飼い主の訓練用ハンドサインは、まさにデフドッグと暮らすための言語的インターフェースになります。これらのコミュニケーション訓練はデフドッグだけでなく、普通の犬であるペットでも有効です。実際、「お手」や「おかわり」などのしぐさは、声だけでなく、人間が手を差し出したり、表情から要求を読み取っているようです。訓練が長く続けば、ハンドサインがなくても、声だけで反応するようになる一方、声無しでも反応するようになります。
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