手話の雑学84

デフ・ドッグズ・ロックという団体の成り立ち、活動内容、哲学、そしてデフドッグの文化的な意味までをご紹介します。創設者は Chris(クリス)夫妻。きっかけは、聴覚障害をもつ子犬「ニトロ(Nitro)」を家族に迎えたことでした。ニトロを育てるなかで、聴覚障害を持つ犬は「問題犬」と誤解されやすく、保護施設でも譲渡が進みにくく、殺処分のリスクが高いのです。しかし実際には、視覚サインを使った学習能力が高く、家庭犬としても十分に適応できるという現実を目の当たりにし、「何かしなければ」という思いで NPO を立ち上げたと言われています。団体名 “Deaf Dogs Rock” は、「耳が聞こえなくても、犬たちは“ロック(最高)だ”」という、軽やかで楽観的なスピリットからきています。ロックというあたりがアメリカ的ですね。この団体の主な活動は
★ 1. シェルターと里親支援(Adoption Support)
アメリカ各地の動物保護施設と協力し、“deaf dog” の救出・保護・譲渡を支援します。
特に資金支援(スポンサー制度)によって、健康診断、予防医療(ワクチン接種)、不妊・去勢手術などを行い、里親に迎えられる状態へ整えるプログラムを展開しています。Deaf Dogs Rock の支援を受けることで、「聴覚障害を理由に殺処分の列に置かれる」ケースが確実に減っているのは、この団体の大きな功績のひとつです。
★ 2. デフドッグの情報発信(Education & Advocacy)
デフドッグを家庭に迎えるためのトレーニング、ハンドサイン、生活上の工夫などを詳しく紹介しています。ハンドサインは手話をそのまま流用するというより、犬が読み取りやすい身体言語(ボディランゲージ)に最適化した記号体系を推奨しており、ユーザーが関心を持つ手話研究の世界ともどこか響き合う領域です。たとえば、STOP(手のひらを見せる)、COME(手前へ引き寄せる動き)、LOOK(指差し→目を指し示す)といった「動きの図像性」が重視されます。
★ 3. コミュニティづくり(Community Building)
SNSを含むオンラインコミュニティを通じて、デフドッグの飼い主、これから迎えたいと考えている人、動物シェルター職員トレーナーが情報を共有し、互いにサポートし合える場を形成しています。ここには「視覚中心の世界を生きる犬と、音声中心の文化を生きる人間が、どのように差を埋めていくか」という学問的にも興味深いプロセスが見て取れます。
★ 4. デフドッグに関する啓発(Advocacy)
多くの人が「耳が聞こえない=訓練できない」と誤解しています。Deaf Dogs Rock は、科学的根拠を示しながら「聴覚は失われても、学習能力は失われない」ことを強調し、社会的偏見をほぐす活動にも力を入れています。
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