手話の雑学105


手話で話す女性のイラスト

パースはアイコンを image/diagram/metaphor に細分しました。これを手話語彙に適用すると、以下のような層構造が見えてきます。

3.2 パースのアイコン三分類と手話語彙

・image(形態的類似)手形・外形・動作が対象の物理的特徴を模写する(「鳥、鍵、電話」などの手話表現)。
・diagram(構造的類似)対象間の関係・運動・配置のパターンを空間的に写し取る(方向性動詞、CL構造など)。
・metaphor(写像的類似)抽象概念の対応を身体空間に投影する(「理解、納得、成長」などの手話)。

三つのモードは手話語彙の内部で重層的に働き、語彙の形成・文法化・抽象化を支えています。 

〈形態的類似:目に見える形の再現〉
【DIAGRAM(ダイアグラム)】【METAPHOR(メタファー)】
〈構造的対応〉〈写像の転移・抽象化〉

三分類は対立ではなく、図像性(iconicity)という連続体の中での三つの働きと考えるほうが、手話語彙の実態に近いです。

4 手話動詞における三分類の生成順序

手話の主要動詞クラス(移動・授受・心的状態)に三分類を適用すると、体系的な差が現れてきます。

4.1 移動動詞(motion verbs)

中心となるのは diagram であり、経路・方向・距離などの関係構造が意味を規定します。image 的要素は弱く、metaphor は「前進=進展」などの抽象拡張として付随します。

4.2 授受動詞(transfer verbs)

方向性動詞であるため diagram が核となりますが、同時に「情報=物体」というメタファーが強く働くので、教示・提示・説明など心理的行為にも物体移動の図式が適用されます。

4.3 心的状態動詞(mental-state verbs)

身体部位(額・胸・腹)への参照が象徴化されメタファーが最も強く表れます。理解・納得・忘却は、それぞれ「内→外」「外→内」「内→外の散逸」などの空間的比喩構造となります。

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