手話の雑学106

手話の移動動詞は DIAGRAM に、授受動詞は DIAGRAM と METAPHOR の中間に、心的状態動詞は METAPHOR に重心を置く形で分布しています。手話動詞の支配関係は次のようになります。
<動詞クラスにおける三分類の支配階層>
移動動詞 : DIAGRAM > IMAGE > METAPHOR
授受動詞 : DIAGRAM = METAPHOR > IMAGE
心的状態動詞: METAPHOR > DIAGRAM > IMAGE
この支配関係図だけではわかりにくいと思いますが、要するに動詞の種類によって、三項の重要性が異なるということです。このように意味を漠然と解釈するのではなく、いくつかの要素に分け、その構造は組み合わせではなく、重層的な重なり合いであって、その重なり具合が意味の違いを生んでいる、という意味論です。構造言語学では、一般に、要素の組み合わせを構造として考え、その代表的思想が、音素が組み合わさって形態素、形態素が組み合わさって語という二重分節という考えが「定説」として固定化されて支配的になっていますが、これは「形式」という観察しやすい面の構造の分析であり、それらの要素の「機能」という面は要素同士が互いに影響し合いつつ、層になっているという考え方になります。言語が層になっているという思想は昔からあり、成層文法や機能文法のような試みもありましたが、正直なところ、文法という形式を記述しようとした点で大成功とはなりませんでした。しかし、文法論でなく、意味論においては、むしろこうした重層的な思考が有効であることが示されていると思われます。
手話を哲学的に考察するとき、必要なのは「音声中心の言語観を疑える人たち」です。今回ご紹介したパース、カッシーラ、ランガーの言語に対する思想は、現代において、手話=言語・身体・意味生成の関わりを立体的に捉えるための必須だと思います。超簡単にまとめると:
・チャールズ・サンダース・パース
手話研究の“原器”。三項記号(表現体・対象・解釈項)とアイコン/インデックス/シンボルの区別は、手話の図像性・指示性・慣習性を同時に説明できる数少ない理論装置。手話は「図像的だから言語でない」という誤解を理論的に粉砕できます。
・エルンスト・カッシーラ
人間=象徴的動物。言語を「音声」ではなく世界構成の形式として定義した。手話は自然に「言語」となる。空間文法・方向動詞・分類詞構造を、文化哲学のレベルで正当化できる。
・スザンヌ・K・ランガー
言語に還元できない意味を理論化。提示的象徴の概念は、手話の同時性・リズム・感情表現を説明する切り札。ナラティブ手話、詩的手話、表情と身体の統合を語るなら不可欠。
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | |

