手話研究の星2 ロイ・K・ホルコム(R.K.Holcom)

トータルコミュニケーションの創始者はホルコムという難聴者です。彼は私の英語でも聞き取れる中度難聴者で、夫人は聾者です。夫人も北カルフォルニアのオロニーカレッジの教授で、同校には日本からの留学生も多く、慕われています。ロイは夫人が聾者で、自分は難聴者で、3人の子供は聾者も難聴者もいます。3人とも優秀でホルコム三兄弟として活躍していました。
ロイによると、家族でコミュニケーションするには英語も手話も必要であるだけでなく、あらゆる手段が必要だったので、聾教育には口話や手話に拘るのではなく、あらゆる手段による「十全な」コミュニケーションが必要だと考えていました。当初はPerfect Communicaitonというのを考えていたのですが、ある時、スーパーのチラシを見ていたらTotal Saleというのを見て、これだと思ったのだそうです。トータル・セールというのは、日本でいう、大売り出し、出血大サービスのようなニュアンスです。
私がホルコム家でロイにインタビューできたのは、マージ夫人との御縁です。私がNCODの要請で、日本手話についての講演をした折、マージが参加されており、帰りがけにオロニーにも来てくれないかというお誘いがありました。正直なところ、当時、私はマージについても、オロニーカレッジについて何も知らなかったので、半信半疑で、社交辞令のつもりでOKしました。しばらくするとNCODのTDD(テレタイプ)で日にちの問い合わせがあり、航空料金負担と講演料についての了解を求められました。私のビザは労働ビザではないので、仕事をすることは許可されていません。カールに相談したところ、少額であることから問題ないのではないか、という見解でした。そして数日後、航空券と講演料の小切手が送られてきました。初めてオロニーカレッジに行き、大学付置の聾学校を視察して講演も無事済みました。日本だとこういう講演の後は「打ち上げ会」になるのですが、アメリカでは主催者の自宅に招かれてパーティというのが一般的です。そこで彼女の自宅に連れて行っていただき、夫であるロイに紹介されました。以前から、TCの創始者の名前は知っていましたが、まさかご本人に会うとは思ってもみませんでした。よく考えればマージの姓名がホルコムなので気づくべきでしたが、アメリカではファーストネームで相手を認識する個人主義なので、夫については考えが及ばなかったのです。夫婦が別姓であることもあり、基本的に夫婦も社会的には個人なので、こうした驚きがしばしばあります。
ロイにはTCを発想した経緯を詳しく聞きました。そしてTCがアメリカでどのように展開したかも聞きました。日本でのTC運動についても少しは知っていたようです。実際、聾教育研究者によって紹介している論文はありました。しかし日本ではTCは「手話導入」と混同されることが多く、「TC研究会」の主催が栃木聾学校の田上隆司先生を中心とした「同時法グループ」であったため、同時法との混同もあって、理念よりは方法論として広がってしまったという経緯があります。当時、口話と手話は方法論(メソッド)の違いという議論が主流でした。
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