手話研究の星1 カール・カーシュナー④(Tripod とNPO)

TCという理念とインクルージョンという理念を合体させ、さらにモンテソリメソッドを導入した幼児教育を実践したのが、カールが創始したトライポッド(Tripod)です。トライは3、ポッドは足で、普通名詞ならカメラの三脚のことです。カールの思想は教師と親と子供の三者が同じ立場で尊重しあう、ということを三脚で象徴しています。
LAの北部に幼稚園を開設し、そこには聾児と聴児が同じ場所で学んでいました。手話は自然な形で使われ、教材はモンテソリに従って作られ、生徒は個人の興味と進度に従って学習するシステムです。現場には何度も訪れたことがありますが、そこに行くと、子供たちが寄ってきて、最初にする手話が「Deaf?」というものでした。アメリカでは最初に聞くのが「Whacha name?」で、まず名前を聞くのが通例です。個人としてのアイデンティティはファーストネームだからです。日本では姓を名乗りますが、アメリカではラストネームは人種や宗教などの背景情報なので、それを知ると付き合い方がやや面倒になります。そこでファーストネームで呼び合うことで、互いを個人として付き合うためのツールにしています。ところがトライポッドでは、まず聾かどうかを聞いてきます。これは聾なら手話で会話する、ということを幼児が理解しているからです。そして次に「Name?」と聞いてきます。ここで大事なことは手話ネームです。私の場合、カールから最初に手話ネームを作ることを指示されたので、工夫してKAZというアメリカでの通称を指文字のKにZの動きを合成して作りました。1音節でわかりやすい、のとアメリカにはない方法なので、「外国人であることが明快」だとして、好評でした。あちこちで使ったので、この手話ネームで私を知っている人は私に会った人ということになります。私個人のアイデンティティということです。
トライポッドには日本から中博一(あたりひろかず)氏が長期滞在し、アメリカ手話と聾教育について学ばれました。彼は帰国後、手話通訳士の試験を実施する団体の職員として、手話通訳士試験の普及に努力され、また著作権法の研究成果があります。学生時代は私との共同研究もあり、神田文庫にも所蔵されている「日本手話音韻表記法」の共著者でもあります。
トライポッドのもう1つの特徴はNPOであることです。当時、日本にはNPOという制度はなく、その制度の詳細を学べたのも幸運でした。日本では堺屋太一が経済政策の1つとして導入しましたが、アメリカの制度とは微妙な違いがあります。日本で導入された時、手話検定の組織を設立するに当たり、NPOの申請を行いました。申請は2000年10月で、認証は2001年1月31日ですから、今年で満25年を迎え、26年目に入ることができました。これも受験者のみなさまやスタッフのみなさまのおかげだと心より感謝しております。天国のカールもこの報告にはとても喜んでくれていると思います。手話を技能と考え、検定試験を開始したのは私独自の思想ですが、当初は全日本ろうあ連盟や全国手話通訳者問題研究会が大反対で、様々な妨害がありました。
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