サンフランシスコから北上

十三夜の月のイラスト

サンフランシスコから、せっかくなのでゴールデンゲートブリッジを渡って、今度は海岸通りをのんびりではなく、オレゴン州を通って、ワシントン州のシアトルまでの遠距離ドライブをしてみましょう。海岸に沿って行けなくもないのですが、有名なワイナリーもありますし、州都のサクラメントなどもありますから、高速道路である5号線を北上するルートを取ります。

まずはサンフランシスコの北端である金門橋(Golden Gate Bridge)を通ります。ここは101号線です。どの橋でもそうですが、渡る時はあっけないものです。橋はやはり下から全景をみるのが圧巻です。赤い塔が霧の中から浮かび上がる Golden Gate Bridge を渡ると、空気が少し変わります。右手には牢獄で有名なアルカトラズ島が見えることもあります。

対岸に広がるのが、海辺の小さな町 Sausalito です。かつては造船の町として栄えましたが、現在はアートギャラリーやカフェ、マリーナが並ぶ穏やかな港町として知られています。古くから画家や写真家、音楽家など多くの芸術家が暮らした町でもあり、自由で少しボヘミアンな空気が今も残っています。海に浮かぶハウスボート群も、そうした芸術家文化の象徴として知られています。坂道に並ぶ家々は地中海沿岸の町を思わせ、晴れた日にはサンフランシスコ湾越しに市街地を一望できます。海辺の遊歩道を歩けば、ヨットのマストが風に揺れ、クラムチャウダーの香りが漂います。サンフランシスコの都会的な緊張感から少し離れ、ゆったりとした創造の時間が流れる場所――それがソーサリートの魅力です。

最初は海沿いを走る101号線。右手にはサンフランシスコ湾、左手には乾いた黄金色の丘が続き、マリン郡らしい穏やかな風景が広がります。途中、霧が低く流れる朝には、ユーカリやレッドウッドの香りが車内にまで漂ってくることがあります。

やがて道を35号線側へ変えると、観光道路というより、土地の呼吸を感じるようなルートになります。森の中を縫うように続くカーブ、突然開ける牧草地、小さな農場やワイナリー。海辺の都会的な空気は少しずつ後ろへ遠ざかり、北カリフォルニアの「内陸の静けさ」が前面に現れてきます。

そして現れるのが、ワインの里 Sonoma です。ソノマはナパよりもやや素朴で、スペイン伝道時代の面影を残す町並みが特徴です。広場には古いミッション建築が残り、ワイナリーも家族経営の小規模なものが多く、どこか牧歌的な雰囲気があります。画家や工芸作家が移り住んだ土地でもあり、レストランや雑貨店にも芸術文化の香りが漂います。

さらに北東へ向かえば、世界的ワイン産地として知られる Napa に入ります。整然と並ぶ葡萄畑、丘陵に建つシャトー風ワイナリー、陽光に輝く葡萄の葉。その景色はどこかヨーロッパ的でありながら、乾いたカリフォルニアの光に満ちています。高級レストランやスパも多く、ソノマの素朴さに対して、ナパは洗練された大人のリゾートという印象があります。

ゴールデンゲートを越え、海辺の芸術家の町を抜け、森と丘陵をたどりながらワインの谷へ向かう旅。その道筋そのものが、北カリフォルニアという土地の多層的な魅力を語っています。

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