ジョン・スミスの生涯 ― ジェームズタウンを救った開拓者

アメリカ植民地時代の歴史を語るうえで欠かせない人物の一人が、ジョン・スミス(John Smith、1580年頃~1631年)です。彼はイギリス人の軍人、探検家、航海者であり、北米初のイギリス恒久植民地ジェームズタウンの存続に大きく貢献した人物として知られています。その波乱万丈な人生には伝説的な逸話も多く、歴史と神話が入り混じる存在でもあります。
ジョン・スミスはイングランド東部リンカンシャー州で農家の子として生まれました。若い頃から冒険心に富み、16歳頃には家を離れてヨーロッパ各地を旅します。フランスやオランダで兵士として戦い、その後はハンガリーでオスマン帝国との戦争にも参加しました。戦場では勇敢さを発揮して昇進しましたが、一時は捕虜となり奴隷として売られたとも伝えられています。その後、劇的な脱出を果たし、各地を経てイギリスへ帰国しました。この経験は後年出版した著書にも記され、彼自身の名声を高めました。
1606年、イギリス国王ジェームズ1世の勅許を受けたヴァージニア会社は、新大陸への植民事業を開始します。スミスは3隻の船団に加わり、1607年5月、チェサピーク湾沿岸にジェームズタウンを建設しました。これが北米における最初のイギリス恒久植民地となります。しかし、植民地の生活は過酷でした。多くの入植者は金鉱探しばかりに熱中し、農作業を軽視したため、食糧不足が深刻化しました。さらに湿地帯に建設された集落では病気が流行し、多くの人が命を落としました。この危機の中で指導力を発揮したのがジョン・スミスです。
彼は「働かざる者食うべからず」という厳格な方針を打ち出し、全員に労働を義務づけました。食料の確保、砦の整備、周辺地域の探検を進めることで、植民地は徐々に安定していきます。今日でもジェームズタウンが存続できた最大の理由の一つとして、スミスの統率力が挙げられています。
スミスを語る際に欠かせないのが、ポウハタン族の酋長の娘ポカホンタスとの逸話です。二人が出会った1607年当時、ジョン・スミスは27歳前後、一方のポカホンタスは10歳から12歳ほどであったと考えられています。この年齢差は約16~18歳あり、現在では両者が恋愛関係にあったとする説は史実とは考えられていません。実際、ポカホンタスはまだ子どもであり、ディズニー映画のような成人女性ではありませんでした。なんでも恋愛物語にするディズニーの特徴で、またそれがアメリカでは受ける理由でもあります。
1607年、探検中に先住民に捕らえられたスミスは処刑されそうになりますが、幼いポカホンタスが身を投げ出して彼を救ったという話が広く知られています。しかし現在では、この出来事の史実性について議論があります。スミス自身も事件から十数年後になって初めてこの話を書き残しており、実際には先住民社会の通過儀礼や養子縁組のような儀式を誤解した可能性や、自身の名声を高めるために脚色した可能性も指摘されています。
それでも、ポカホンタスがその後たびたびジェームズタウンを訪れ、食糧を届けたり、植民者とポウハタン族との仲介役を務めたりしたことは、多くの史料から確認されています。彼女の支援がなければ、植民地はさらに厳しい状況に置かれていた可能性があります。
1609年、火薬の爆発事故で重傷を負ったスミスはイギリスへ帰国し、その後二度とヴァージニアへ戻ることはありませんでした。そのため、ポカホンタスと再会することもありませんでした。一方、ポカホンタスは1614年に入植者ジョン・ロルフと結婚し、翌年に息子トマスを出産します。1616年には一家でイギリスを訪れ、その際、約7年ぶりにジョン・スミスと短い再会を果たしたと伝えられています。スミスは36歳頃、ポカホンタスは20~21歳ほどでした。
1614年にはスミスは現在のアメリカ北東部沿岸を探検し、その地域を「ニューイングランド」と名付けました。この名称は現在もアメリカ北東部6州を指す地域名として使われています。
晩年はロンドンで著述活動に専念し、『ヴァージニア総史』など数多くの著作を出版しました。これらは初期植民地時代を知るうえで極めて重要な史料となっています。1631年に51歳前後で亡くなり、ロンドン市内のセント・セパルカー教会に埋葬されました。
ジョン・スミスは、優れた探検家であると同時に、自らの功績を積極的に語る人物でもありました。そのため彼の記録には誇張が含まれる可能性がある一方、植民地建設への貢献そのものは歴史学者の間でも高く評価されています。もし彼の厳格な指導力がなければ、ジェームズタウンは初期の飢餓や混乱を乗り越えられず、アメリカにおけるイギリス植民地の歴史は大きく変わっていたかもしれません。
今日、ジョン・スミスは「アメリカ建国以前の礎を築いた開拓者」として記憶されています。伝説に彩られた英雄という一面だけでなく、未知の世界で生き抜いた現実的な指導者として、その生涯は今なお多くの人々の関心を集め続けています。
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