日本史と世界史で読み解く 北米建国物語 第2回(続)日本では秀吉が天下を統一する

ロアノーク植民地が謎に包まれていた頃、日本では歴史が大きく動いていました。1582年、明智光秀による本能寺の変によって織田信長が倒れます。その後、豊臣秀吉が勢力を伸ばし、1590年には小田原の北条氏を降伏させ、全国統一を達成しました。つまり、日本では一人の権力者が国内を統一していたのです。
一方、イギリスでは海外に新しい植民地を作ろうとしていました。まったく異なる歴史が同じ時間に進行していたのです。
秀吉は朝鮮半島へ軍を送り、東アジアにおける勢力拡大を目指しました。イギリスは大西洋を越え、北米へ進出しようとしていました。この違いは、その後の日本と北米の歴史を考える上で重要です。
1603年 家康が江戸幕府を開く
1600年 関ヶ原の戦いで徳川家康が勝利します。そして1603年、家康は征夷大将軍となり、江戸幕府を開きました。
同じ頃、イギリスではジェームズ1世が即位します。
ここで北米史が大きく動きます。イギリスでは、国王から特許状を得た「バージニア会社」が設立され、北米に植民地を建設する計画が進められました。そして1606年12月、3隻の船がイギリスを出航します。「スーザン・コンスタント号」、「ゴッドスピード号」、「ディスカバリー号」です。約4か月の航海を経て、1607年5月、彼らはチェサピーク湾へ到着しました。そしてジェームズ川沿いに集落を築きます。これが、ジェームズタウンでした。
・1607年、ジェームズタウンが誕生した
ジェームズタウンは、現在のバージニア州に位置しています。イギリス王ジェームズ1世の名前から名付けられました。ここで重要なのは、ジェームズタウンが単なる探検基地ではなく、恒久的な植民地として計画されたことです。しかし、生活は極めて厳しいものでした。湿地帯だったため水質が悪く、蚊が多く、病気が蔓延しました。食料も不足しました。さらに、入植者の多くは農業経験が乏しく、金や銀を探すことを優先しました。そのため、植民地は一時消滅寸前にまで追い込まれます。ここで重要な役割を果たした人物がジョン・スミスです。彼は周辺地域を探検し、先住民族との交易を進め、植民地の秩序を維持しました。後にポカホンタスとの物語で有名になる人物です。
・その翌年、フランスも北米へ
ジェームズタウン建設の翌年、北へ目を向けると、フランス人も新たな拠点を築いていました。
1608年、サミュエル・ド・シャンプランがセントローレンス川沿いに築いたのが、ケベックです。ケベックは現在のカナダ・ケベック州の中心都市となります。シャンプランは単なる軍人や探検家ではありませんでした。先住民族との同盟関係を築き、毛皮交易を発展させることで、フランスの北米進出の基盤を作りました。ここからフランスはセントローレンス川、五大湖、ミシシッピ川へと進出し、広大な「ヌーベル・フランス」を形成していきます。
・日本では「城」、北米では「植民都市」
ここで、安土城とジェームズタウンを並べてみると面白いことが分かります。安土城が完成したのは1579年頃。ジェームズタウンが建設されたのは1607年。約30年の差があります。
安土城は、国内統一を進める権力者の巨大な政治・軍事拠点でした。一方、ジェームズタウンは、海を越えて新しい土地に社会を作るための拠点でした。つまり、日本では「国内を統一する」という方向へ歴史が進み、イギリスでは「海外へ新しい社会を作る」という方向へ歴史が進んでいたのです。この違いは非常に重要です。
・なぜ日本は海外植民地を作らなかったのか
ここで一つ疑問が生まれます。「日本も戦国時代には海外へ進出する力を持っていたのではないか?」実際、豊臣秀吉は朝鮮出兵を行いました。しかし、日本の海外進出はヨーロッパ諸国の植民地拡大とは異なるものでした。イギリス、フランス、スペインなどは大西洋を越えて、恒久的な植民地を建設しました。その背景には、大航海時代、海軍力、商業資本、キリスト教布教、そしてヨーロッパ諸国同士の競争がありました。
一方、日本は国内統一の後、徳川幕府によって国内の政治秩序を安定させる方向へ進みます。
1603年の江戸幕府成立は、その象徴でした。そして17世紀前半、日本は海外との関係を厳しく管理する方向へ進んでいきます。
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