兵学校
明治3年(1870)明治政府は東京海軍所を海軍兵学寮、大坂兵学寮を陸軍兵学寮と改称しました。当時はまだ旧暦でしたから、11月4日のことです。これが海軍兵学校、陸軍士官学校となり、現在は、それぞれ海上自衛隊幹部候補生学校、陸上自衛隊幹部候補生学校となっています。海軍は英国式、陸軍は仏国式が始まりでした。
諸外国を旅行すると、どこの国でも兵学校への尊敬と立派さに驚きます。同時に日本の異常さに複雑な思いをします。憲法のせいかもしれませんが、日本人は教育によって軍事は悪い事として刷り込まれていると感じます。そして軍人出身の政治家が稀有です。どこの国でも兵学校出身のエリート軍人は軍務だけでなく、政治にも関与しています。米国のように徴兵制がある国では、国民の三大義務に納税、軍務、国家への忠節があり、そして教育の義務があります。日本では誤解している人がいますが、教育の義務とは本人が教育を受けることが義務なのではなく、本人には教育を受ける権利があるので、親が教育を受けさせる義務があることを教育の義務というのです。
兵学校も教育機関の1つであり、一般が想像する軍事訓練の他に、語学などの一般教養を教育しています。兵学校はいわゆる士官学校であり、現在では防衛大学校などの大学卒業生が入学する上級の教育課程です。大学院がアカデミックな教育なのに対し、実用的な教育になっていると解釈するのが正しい認識だと思います。米国のNASAなどは高度な研究機関であり、博士課程修了が前提となっていますが、軍事の一部であることは日本では意外と忘れられています。
明治時代、富国強兵が国策でしたが、その基盤となったのが国民の教育でした。江戸時代は藩校があり武家では文武両道として教養教育が盛んで、実際に藩の経済や政治を行ったのは武士ですから、今風の見方をすればどこも軍事政権であったわけです。一般庶民の多くは寺子屋などで読み書きを習い、丁稚奉公して技術と算術を教育されていたので、当時、日本を訪れた外国人は日本国民の教育程度の高さに驚いていました。現在はあまり使われませんが、識字率が非常に高い国でした。この識字力を英語ではliteracyリテラシーといいますが、現在では情報リテラシーのように理解力として意味を拡大しています。その意味でいうと、日本国民は軍事リテラシーが異様に低い国です。戦前までは兵学校が多くあり、徴兵制でしたから、軍事リテラシーは高かったのですが、現在は兵学校が特殊化され富国弱兵の国になりました。軍事政権を否定することは武家政権も否定し、日本の歴史をも全否定することになってしまいます。
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