税関と関税
1952年(昭和27年)に当時の大蔵省が税関の日を制定しました。11月28日になった理由は、明治5年(1872)のこの日、長崎・神奈川・箱館(函館)に設けられていた運上所の呼称を税関に改めたことによります。
税関を英語ではcustomsといいます。複数形であることに注意してください。単数形のcustomは「習慣」という意味です。複数形で意味が変わる語はmean(意味)、means(手段)などかなりありますので、きちんと理解していないと誤解を生みます。
Customsの場合、語源的にはcustom-houseが縮小したものと言われています。日本語だと税関で支払う税金を関税というので、これも混同されやすいです。
関税は英語ではdutyといいます。免税店をDuty Free Shopというので、ご存じの方も多いと思います。明治時代初期はあらゆる日本の習慣や文化を変更していったのですが、関税の前の用語は運上金といいました。農業の場合は年貢ですが、農業以外の商業・工業・漁業などの産業従事者に対して一定の税率を定めて課税したものを運上といいました。また特定の免許を得てその代わりに一定の税率等を定めずに必要に応じて上納させたものを冥加(冥加金)といいました。冥加金とは本来、神社やお寺に収めるお金のことでしたが、それが領地の藩から認可をもらう代わりに納める税金のことを冥加というようになったものです。
税金は租庸調の昔から、あらゆる場面で徴収されるものです。政府は大小に関わらず民衆から金を集める知恵ばかり働かせているようです。一方で、免税という特権を出すことで利権構造になりやすい側面もあります。また税率の変更という政策が経済を大きく変えることもあります。
関税は外国との貿易の際の税金なので、輸入品に対して量的な制限を加える手段になります。西欧が植民地や敗戦国に対して不平等条約を押し付ける場合も関税権を与えないことが重要な要素の1つです。また国内産業を守るために関税をかけることも行われます。昔、日本は米が重要産品ということで、外国から安い米が入ってくることを高関税をかけることで制限していました。このように各国が関税をかけあうと、力のある国が有利になります。そこで国際的に調整するための機関としてWTOが設立されましたが、一方で各国同士の二国間協定もありました。世界をまとめるのは困難なので、ヨーロッパが1つになって欧州連合(EU)になったり、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)のようなブロック経済圏ができています。これはどちらも相互に関税をかけない協定です。これは輸出には好都合ですが、輸入制限には不利ですから、理想的のようでいて、必ずしもそうでないことを知っておきたいです。
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