視覚化
色(しき)の話の続きです。最近はビジュアルという表現の意味がかなり拡大しています。ビジュアル系バンドのように「見た目」の意味にも使われます。本来は英語のvisualという形容詞なのですが、語源は見るという意味のラテン語で、同じように派生した単語にはvisit, visonなど見るという意味から連想できる語もありますが、wise, adviseのように見る意味からは連想できない語もあります。見るという意味から「わかる」という意味にも広がっていて、英語で、わかった、いう時I see.というのはここから来ています。わかるという意味がさらに広がってwise, wizardなどもありますが、こうなるともう訳がわかりませんね。文字もvがwになったのは、vとwは元々関係が深いことがわかります。
最近流行の視覚化はvisualizationの訳語です。「見える化」という表現もあるようです。わかりにくいことでも視覚化することでわかりやすくなる、ということで、たとえば感染者数の変遷が数字だけではわかりにくいのをグラフ化することで「急激に増えた」ということが理解しやすくなります。割りあいも%の数字より円グラフの方がわかりやすいのでテレビなどではよく使われます。
意外に思われるでしょうが、これはデジタルデータのアナログ化です。今はデジタル化が至上命題のような風潮ですが、実はデジタルデータは理解が難しい場合がありアナログの方がわかりやすいことがたくさんあります。たとえば「午後1時」という時刻はデジタルですが、「2時から3時までの1時間」はアナログです。デジタルを日本語にすると計数的、アナログは計量的です。英語の時間にmanyは普通名詞、物質名詞にはmuchと習ったと思いますが、これがデジタルとアナログの概念をわかりやすく説明しています。物質名詞は単数形しかない。しかしwaterが複数形になる、つまり計数的になることをごぞんじでしょうか。There are many waters in Japan.は「日本にはたくさんの湖、池などがある」と訳されます。湖や池などの水の塊は数えることができるということです。デジタルとアナログは相補的であって、どちらかを優先するものではない、ということを理解する必要があります。人間の語感はアナログで、運動や流体もアナログです。さらにいえば自然現象もほぼアナログです。デジタルデータのメリットは計算できるということで、現代のコンピュータがデジタルデータに特化しているにすぎません。一番簡単な数学としては分数はアナログ、少数がデジタルです。3分の1というアナログデータをデジタル化すると0.33…のように近似できますが、イコールではありません。円周率もアナログデータです。アナログは古臭いと思っている人がいますし、コンピュータ社会についていけない人がアナログ人間と思われていますが、人間は元々アナログであることを知ってほしいです。
したがって流行の視覚化とはデジタルデータのアナログ化であることも理解したいです。
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