合理主義への誤解
合理主義とは読んで字の如く、理性に合うということです。よく似た音で功利主義というのがあり、これは読んで字の如く利の功名ではなく、平たくいえば結果オーライの考え方です。正確には帰結主義といいます。功利主義と似たようなのが利己主義。これは自分さえよければ、という考え方で、よく知られています。
このように〇〇主義というのは基本は英語のismであり、考え方、思想のことです。意外に思われるかもしれませんが、キリスト教もChristianismと呼ばれ、仏教はBudhismであり、直訳すればキリスト思想、仏陀思想ということです。共産主義はcommunismで社会主義はsocialismで統一的に解釈できますが、民主主義はdemocracyでismではありません。他にcracyがつく英語としてはbeaurocracy官僚制度があり-cracyは主義ではなく制度なのです。政党としての民主党はdemocrats、対抗する共和党はrepublicansで共和主義はrepublicanismです。こうしてみると、主義と訳されたり、制度と訳されたりする政治用語は思想や宗教とも絡む複雑な歴史と背景があるのです。日本人がこうした欧米の理念を学ぶ時、日本語の世界だけで考えていると誤解が生じる危険があります。
合理主義はrationalismの訳で功利主義はutilitarianismまたは主唱者の名をとってBenthamismです。英語の名詞rationは配給のことですが、そこから派生した語ではなくrationaleが形容詞になってrationalとなると理性的という意味になり、そこから理性主義つまり合理主義がrationalismという語になりました。rationはレイションですが、rationaleはラショナルで発音も違います。語源を知らないと「配給主義」という誤訳になりそうです。
合理主義は日本で間違って節約と勘違いされる場面がよく見られます。昔、国鉄や官業では合理化という名の下、首切りや人員整理が行われました。今でもリストラという形でこの手法が残っています。リストラも本来は再構築という意味のrestructuringが来たのですが、これは完全な和製英語というか、日本式の誤用で、英語ではダウンサイジングです。つまり規模の縮小のことですから、それに伴う人員整理というのは合理的です。それで合理化と呼んだのでしょうが、いつのまにか首切りという意味に変わってしまいました。
本来の合理化は縮小とは限りません。理性的な判断なので拡張も現状維持もあるのです。ここに多くの日本の経営者の誤認があるように思えます。利益が少なくなったからすぐに縮小しかない、コストカットという短絡的な判断が理性的かどうか、熟考するべきです。功利主義でも結果が大切です。縮小の結果、人材や資源を失ったという結果的に失敗になった例も数多いと思います。
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