二日灸
3月4日は旧暦如月二日です。この日にお灸をすると普段の倍の効果があるとされ、二日灸といいます。灸はやいとともいいます。灸は今でも一部では人気があり、とくに焼け跡ができないタイプが発売されてから広く利用されています。本来は艾(もぐさ)に火をつけるもので、どうしてもやけどができます。また虫封じということで、昔は子供がいたずらをするとお灸をすえたことから、強く注意することを「お灸をすえる」という慣用句ができました。
灸の本場として大阪の上本町に無量寺という寺があり、無量寺灸の本家だそうです。灸はハリと同じくポイントが重要で知識と技術が要ります。ここのお寺では症状に合わせて治療としての灸をすえてくれるそうです。灸は自分で自分にする分には資格は不要ですが、他人に施術する場合は鍼灸師の免許が必要です。もし無資格で灸をすると、それこそお上からキツイお灸をすえられます。
江戸で有名だったのが吾妻橋近くにあった遍照院が「弘法の灸」です。今はこの寺は無くなってしまいましたが、明治までは灸を求める人で繁盛したそうです。寺で灸の施術するのは一般的だったようで、他にも全国各地に灸で知られた寺があります。今では鍼灸院でしかできなくなり、寺の灸は廃れてしまいました。
灸は熱いので我慢が必要になります。その我慢をネタにした落語が「強情灸」という噺です。例によって元は上方落語の「やいと丁稚」という噺だったそうです。この噺はやせ我慢好きの江戸っ子の心情をうまく表現しており、表情がおもしろいので演者による違いも大きく人気があるネタの1つです。
灸は東洋的治療なので欧米で普通に見ることはありません。英語ではmoxibustionというらしいがこれはmoxaとcombustion(燃焼)の合成語のようです。英語のmoxaは日本語のもぐさから借用されています。英語に入った日本語で有名なのがmoxaの他にtsunami,shogun,bonsaiなどがあります。しかし欧米人にはもぐさも灸もイメージができないと思われます。
こういう東洋的な治療法は欧米では一部では人気があるものの、一般の人は知りません。昔、アメリカに居た頃、肩凝りがひどくて医者に行った時、貼り薬か塗り薬をほしいと言ったら、処方できないと断られました。そもそも肩凝りという概念もなく、かといって欧米人は肩が凝らないかというとそんな訳はなく、肩の筋肉が固くなるstiff shoulderといい、その治療法は熱めのシャワーを浴びて、アイスパックをするのだと教えられました。ただ東洋では貼り薬、塗り薬があるという知識はあるので、ほしければChinese doctorのところへ行けと言われました。日本でいう漢方医のことです。もしかすると中国か日本の食料店に行くとあるかもしれない、とアドバイスがあり、日本食料店に行くとなるほどサロンパスとタイガーバームがありました。この時ほど文化の差を感じたことはなかったです。日本にならどこにでもあるものがアメリカでは普通ではなかったのです。以後、注意して観察すると、たくさん出てきました。反対にアメリカに普通にあって日本にないものもありました。これほどアメリカ化した国でもやはり生活習慣や文化の差はなかなか縮まらないものなのです。アメリカ特有と思われるものの1つがキャンディ類です。チョコレート系はだいたい共通ですが、ジェリービーンズは日本ではまずみかけません。クリスマスのターキーやクランベリーソースも稀です。そもそも温泉もないので灸などありえないです。
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