DNA Day



4月25日はInternational DNA Dayです。1953年4月25日ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンス、ロザリンド・フランクリンと同僚らが『ネイチャー』にデオキシリボ核酸(DNA)の構造を論文として出版したことを記念して、アメリカの上院と下院の決議により祝われました。しかしこれは1回限りの祝い事と宣言され毎年の記念日とされなかったのですが、2003年以降はアメリカ国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の主催で4月25日より少し早い4月23日(2010年)、4月15日(2011年)、4月20日(2012年)にDNAの日が祝われているそうで、けっこうバラバラのようです。日本ではDeNAという同じ発音の野球チームないしゲーム会社が知られていますが、コロナ禍のせいでDNAもけっこうニュースに上がってきて、多少混乱しています。
DNAの正式名称はdeoxyribonucleic acidでデオキシリボース(五炭糖)とリン酸と塩基 から構成される核酸という定義です。しかし化学に疎い一般人には何のことだかわからないので、二重らせん構造の立体模型から想像していると思われます。そしてこれが遺伝情報を伝える物質だと理解していることと思います。それでかまわないのですが、せっかくのDNAの日なので、もう少し踏み込んでみましょう。
そもそも核酸とは何か。原子核と同じ核という表現が使われるので放射能と関係があるような誤解も生まれそうです。核兵器とか核拡散防止のような用語があるので連想するのも無理ありません。核酸は原子核とは関係がなく、英語のnuclearの訳語として核を当てていることと、本語の核が本来は種の外の硬い部分を指す言葉だったのが入り混じってわかりにくくなっています。なまじ漢字の意味がわかる分、混乱も起きやすいわけです。別名のヌクレイン酸にすれば誤解は減るかもしれません。もっとも酸は塩酸や酢酸などの酸と同じなので酸っぱい感じを連想するかもしれませんがこれも誤解です。「核酸とは塩基・糖・リン酸から成るヌクレオチドが長い鎖状に結合した高分子物質で、糖の部分がデオキシリボースであるデオキシリボ核酸( DNA )とリボースであるリボ核酸( RNA )に大別され,生物の増殖をはじめとする生命活動の維持に重要な働きをする」と定義されています。重要なのは塩基の部分でアデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルがあり、それぞれ A, G, C, T, U と頭文字をとっています。この塩基が連続して連なっている図は見たことがあるかもしれません。
ウイルスにはDNAをもつものとRNAをもつものがあり、現在パンデミックを起こしている新型ウイルス(COVID-19)はRNA型です。そこでmRNA(mはメッセンジャ)を人間の細胞に入れると細胞内のリポソームという物質があるたんぱく質を作り出し、それがこのウイルスへの抗体となるしくみです。本当はもっと複雑なしくみなのですが、ここではこの程度にざっくりと説明しておきます。ワクチンというと従来は毒性を弱めた菌そのものを注射して自然免疫の抗体を作らせるという理解だと思いますが、それが生ワクチンです。mRNAワクチンはそれとはまったく異なるもので遺伝情報だけを入れるタイプです。遺伝子を注射するタイプのワクチンもあり、最近組み換えたんぱくによるワクチンも承認されるようで、体質に合わせて選択できるようになってきています。DNAが遺伝情報であることが知られて遺伝子だと古いような感覚かもしれませんがDNAには遺伝情報をもっている部分ともっていない部分が存在し,遺伝情報をもっているDNAの一部が遺伝子ということも知っておいてください。

DNA

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