メトン周期
暦の話が続きます。一般にはほとんど知られていませんが、暦を作成する上でメトン周期という法則があります。Wikipediaの解説によると「19太陽年は235朔望月にほぼ等しいという周期のことである。メトン周期は、太陰太陽暦において閏月を入れる回数(19年に7回の閏月を入れる)を求めるのに用いられた。」とありますが、何のことだかわかる人は少ないと思います。本コラムでも話題にした閏月の入れ方の法則なのですが、「紀元前433年にアテナイの数学者・メトンが当時行われていた太陰太陽暦の誤りを正すために提案したのでこの名がある。中国では、19年を1章と呼ぶことから章法(しょうほう)と呼ばれた(独自に発見したとも、東漸したとも言われる)。」という解説をみてさらに驚きます。約2500年前に発見された法則なのですね。そして中国でも同じことが言われているとか。これは何年もかけて、天体を観測し続けて発見した偉大な経験則といえます。原理的には20年かければわかることですが、実際には一人の人ではなく、何代にもわたって観測したのだろうと想像できます。さらに解説では「メトン自身は、19太陽年 = 235朔望月 = 6940 日ちょうど、として計算していた。これは1太陽年を約365.263日、1朔望月を約29.5319 日としていたことになる。」としていますが、あくまでも後世の意見であり、メトン自身がそう想定していたかどうかはわからないことです。後に後にカリポスやヒッパルコスによって修正され、それぞれカリポス周期、ヒッパルコス周期と呼ばれているそうですが、暦を作るに当たって、太陽の運行(地球の公転)と月の運行(地球の自転)のずれがずっと問題になってきたという歴史を物語っています。
一方で旧暦には干支が書かれています。干支の方はまったくずれが起こりません。干支は自然現象とは関係のない人工的な産物なので、ずれが起こるはずがないわけです。同様に週も人工的な周期なので、原則的にはずれが起きません。それで閏年や閏日あるいは閏秒などは修正のために存在しますが、閏週というのは存在の必要がないわけです。しかし閏週を提案している人もいるようです。「ジョンズ・ホプキンス大学の経済学教授であるスティーブ・ハンキ(Steve Hanke)氏は、定期的に追加の週を設けることにより、このずれを修正できると主張する。ハンキ氏は、同じくジョンズ・ホプキンス大学の天文学者であるリチャード・コン・ヘンリー(Richard Conn Henry)氏とともに新しい暦を考案した」という記事がありました。新しい暦を導入すると、クリスマスと元日はこの先ずっと日曜日になり、米国の納税期日である4月15日も同じく日曜日、独立記念日の7月4日は常に水曜日になる、ということだそうです。これも人工的操作ですね。(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5496/)
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