論法と論理
よく誤解されるのですが、論理と論法は違います。英語でいうなら論理がreason、論法がreasoningで、論理を展開することが論法です。英語reasonには名詞と動詞があり、その動詞を動名詞化しています。このニュアンスがわかるようになると英語の本質というか使い方がわかるようになります。
論法にもいろいろあるのですが、その中で有名なのが三段論法です。A→B、B→CならばA→Cという推論だ、という誤解があります。本当は大前提(A=B)と小前提(C=A)があれば結論(C=B)というものです。そして大前提、小前提、結論をまとめて命題と呼んでいます。例題として、大前提:すべての哺乳類は動物である。小前提:すべての象は哺乳類である。結論:よってすべての象は動物である。というのは正しい論法です。こういう命題を考えるのも哲学といえます。
三段論法というとreasoningの一つという印象を日本語では受けますが、英語ではsyllogismといい、この語には詭弁(きべん)という意味もあります。語源的には真ん中にlogという言葉があるように論理があって、syllo-はsyn-と同じく「2つ同時に論理を考える」ということです。三段というので3つのステップでないといけないかのような誤解が日本にありますが、本当は何段でもよいのです。古代ギリシアのアリストテレスがまとめたとされています。アリストテレスの二項対立は有名ですが、これについては後日にします。三段論法の重要な点は数学の集合論の理解を前提としています。上記で「すべての」となっていることも大切です。つまりすべてについて正しくないと成り立たないのですが、それをごまかすのが詭弁です。有名な詭弁として大前提:英雄は色を好む、小前提:我もまた色を好む、故に「我は英雄なり」というのがあります。この論法は大前提からして「すべての英雄が色を好むとはかぎらない」点ですでに間違っていますが、小前提で「我」という個人に限定していることも問題ですから、結論は完全に間違いです。しかし、アリストテレスは次のような定言三段論法を唱えています。大前提:全ての人間は死ぬ、小前提:ソクラテスは人間である、結論:ゆえにソクラテスは死ぬ。これは小前提が個人のことですが、正しいのです。意外と簡単ではなく、いろいろな三段論法があるのでややこしいです。たとえば大前提:自分は運動が嫌いだ(正しい)、小前提:自分は20代だ(正しい)、結論:だから20代は運動が嫌いだ。このように前提が正しくても、論理が飛躍すると結論は正しくなくなります。これも詭弁の1つですが、今ネットで流行りの「論破」にはこうした詭弁も多く見られます。現実的世界は事実があるので確認できますが、抽象的議論ではよくある現象です。ディベート流行の昨今ですが、注意しておきたいですね。
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