Commonwealth



5月24日はコモンウエルスデイという英連邦の祝日です。そもそもコモンウエルスという語を知らない方が多いと思いますが、共和国のようなニュアンスの政治用語です。共和国は別にrepublicがあり、こちらの方はよく知られています。Common は共通、wealthは富なので直訳すると共通富ということですが、通常は共通善と訳されます。Commonwealth という単語を「国家」という意味で歴史上初めて用いたのはオリバー・クロムウェルによる革命政府の名称であるイングランド共和国 Commonwealth of Englandとされています。それ以降、かつてイギリスの植民地だった諸国との緩やかな連合体としてCommonwealth of Nationsが結成されており、その加盟国の中で現在もイギリスの君主を自国の君主(元首)として戴く個々の国をCommonwealth realmと呼んでいるので、日本で英連邦と考えているのとほぼ同じ意味になります。
5月24日はイギリスのヴィクトリア女王(1819~1901年)の誕生日で、かつてイギリスの祝日でした。ヴィクトリア女王は国王ジョージ3世(1738~1820年)の孫として生まれ、1837年にウィリアム4世(1765~1837年)の後を継いで国王に就きました。在位は1837~1901年で、この頃のイギリスの国勢が最も盛んであったことからヴィクトリア時代とかヴィクトリア朝」と呼ばれています。イギリスには何人も女王がいますが、The Queenといえば現エリザベス二世かヴィクトリア女王を指し、物語やドラマにもなっています。先ごろNHKでも放送していました。
コモンウエルスの加盟国は54あり、うち16カ国はエリザベス女王を君主とし、5カ国が独自の君主、残りの33カ国は共和国になっています。大英帝国は今でも生きているのです。コモンウエルスの国々では英語が共通語であり、自動車の左側通行、紅茶を飲む文化が共通し、ラグビーやクリケット、ポロといった英国風のスポーツが盛んであり、政府間の交流も多いのです。かつては英国通貨ポンドが支配し一大経済圏を形成していましたが、第二次世界大戦後は影響力がなくなりました。過去に加盟していて脱退した国も多く、アイルランドやジンバブエがいち早く脱退、ニューファンドランドやローデシアなど消滅した地域、反対に現在加盟申請中の南スーダン、スリナム、ブルンジのような国もあります。またかつて英連邦支配下にあって現在は脱退している米国やUAE、イスラエル、アラブ諸国、エジプト、スーダン、ミャンマーなどの国もあります。そして中国に契約より返還になってしまった香港のような例もあります。全体的には縮小傾向にありますが、小さな島国に見えても英国は今でも世界に支配圏をもつ大国である点が同じ島国でも日本とはかなり違いがあります。
意外に思われるでしょうが、アメリカのち、ケンタッキー州、マサチューセッツ州、ペンシルベニア州、バージニア州の4州は州憲法で自らCommonwealthと規定しています。アメリカはUnited Statesなので全部stateでないとおかしいのですが歴史と伝統を守っているのです。当然保守的な傾向も強いので、大統領選挙の時によく話題になります。歴史的には合衆国憲法の規定とは関係なく、各州政府が「government based on the common consent of the people(人民が共有する合意に基づく政府)」であることを強調しただけで、それ以前の州が英国国王の植民地という地位と対立し、独立性を強調する概念でした。ここでいうCommonwealthとは民衆の「共通の (common)」「富 (wealth)」つまり福祉 (welfare)を意味し、共和国 (republic)を意味していました。これらの州では今でも共和党republicansの牙城である(マサチューセッツを除く)こととは無関係ではないわけです。
現在ではそうした過去の歴史的な意味合いを持たない日として3月の第2月曜日を「コモンウエルスデイ」としている地域も多く、こちらの方が広がりつつあるようです。これは1975年のコモンウエルス会議におけるカナダの提案を受け入れたからだそうです。

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