ロックの日



6月9日はロックの日だそうです。ロックというと音楽のrockでもあり、錠のlockでもあります。日本ロックセキュリティ協同組合が2001年に制定したそうですが、その説明では「我が家のカギを見直すロックの日」ということだそうで、それは結構なことなのですが、日本で誤解が多いのがlockは錠(じょう)のことで鍵はkeyです。カギは閉める道具である錠lockと鍵keyからできています。このことは誰でも知っていますが、普段、錠という言葉を使うことは少なく施錠(せじょう)のような漢語で使う程度です。鍵を閉める、はよく使います。日本語では錠と鍵の違いは曖昧です。しかし英語はlockとkeyは区別されます。閉めるのはlock、開けるのがkeyと覚えておきましょう。この錠と鍵のセットをlocksetといい日本語では錠前と言ってます。鍵のkeyは開くという意味から、重要なとか関門という意味にもなり、ピアノの鍵盤、その延長線でタイプライタのキー、そしてパソコンのキーボードのように範囲が広がっています。錠であるlockの方は閉じるという意味から、固めるという意味に広がり、lockoutやlock onのような用法もあり、名詞になると羊毛や巻き毛のひと固まりという意味にもなります。日本語でいう巻き毛のクルクルはlockです。「三匹の熊」という童話がありますが、Goldilocks and the Three Bears.といい女の子の名前のゴールディロックスは金髪の巻き毛という意味です。
日本人にとって困るのはロックという発音が同じであることで、例えばdeadlockというのは「死んだ錠」つまり開かない錠で、拮抗状態のため動かないこと、行き詰っている状態を意味しますが、時々「デッドロックに乗り上げる」という交渉が行き詰まった状態を表すことがあります。これは錠ならありえないです。錠に乗り上げることなどできないので、rock岩に乗り上げる、座礁して動けないことからの連想と誤用が混じったものです。こういう同音による誤借用は日本語だけの特徴ではなく、英語でもsurloinがsirloinになり、sir+loinと誤認されtenderloinが合成されたという例があります。元のフランス料理はsurlongeです。意味は腰肉上部で、日本語で言うロース肉のことです。
さて発音のお話です。日本人はrとlが苦手とされていますが、どうも誤認があるようです。そもそも英語のrとlの音は日本語にない音です。ローマ字でラ行をrで書くための誤解です。日本語のラ行をゆっくり発音してみると、毎回上の歯茎の少し奥に舌先がくっついて、それから母音とともにパッと離れます。英語のrは舌先が振れません。英語のlはほぼ上の歯の裏側に強く押し付けてから発音します。強いていえばラ行はlの方が近いです。とくにリの場合は口を閉じるのでliと似ています。そこでlの単語の場合はラ行の舌を強く上前歯に押し付けてから発音するとほぼ英語音になります。英語のrは舌先が上に付かないようにすればいいだけですが、ラ行を意識的に舌先を離すのは難しいので、英語ではwriteのように語頭にwがついていることをイメージし、このwを最初に発音するようにいます。日本語のウは英語のuよりも唇の緊張が弱いのでwに近く、それを利用してウライトと発音すると舌先を付けないで発音することがしやすくなります。そこでwra,wri,wru,wre,wroの練習をすると、rockとlockの区別ができるようになります。実はこの区別が発音できるようになると英語を聞いた時も違いが聞き取れるようになります。がんばって練習しましょう。

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