入梅
今年は6月11日が入梅です。最近は気象庁の「梅雨入り宣言」が支配していますが、実際の梅雨入りは地域によって違ったり、宣言が不安定です。反対の梅雨明けはさらに不安定です。暦の入梅は決まっており、雑節の1つです。現在広まっている定気法では太陽黄経が80度のときで6月11日頃となっています。これも日が不安定なわけでなく、入梅の瞬間が一瞬で、どちらの日に属するかの違いです。入梅の対義語は「梅雨明け」を意味する出梅(しゅつばい、つゆあけ)」ですが、気象庁とテレビマスコミ以外、日本ではほとんど使われません。
入梅とは梅の実が熟して黄色く色づく頃に、雨季に入るからです。梅雨入りしてから約30日間が梅雨の期間です。昔の農家にとって梅雨入りは、田植えの日を決める上でも重要でした。昔は、現在のように気象予報が発達していなかったため、江戸時代に目安として暦の上で入梅を設けたとされています。今では田植えは農家の都合で決めています。
入梅の時期は梅漬けの季節でもあります。昔から梅は三毒(食べものの毒・血液の毒・水の毒)を断つといわれる健康食で、梅酒や梅干し作りが欠かせませんでした。また、梅干し作りに使う赤紫蘇も旬です。今では梅干しも梅酒も買う人が多いですが、スーパーには梅も売っていますから、今でも自家製を作る人も多いようです。赤紫蘇は梅漬けだけでなく、柴漬けにも使われるのですが、京都の人以外は柴漬けを自家製する人は少ないと思います。
またこの時期、鰯も旬で、6月に水揚げされる鰯は「入梅いわし」と呼ばれ、珍重されます。入梅いわしは、脂がのっていて1年でもっとも美味しいと言われているので、この時期に食べるのがおすすめです。刺身、焼き、天ぷら、フライといろいろ料理できますし、鰯の梅煮とか、梅肉巻などもおすすめです。鰯と並んで、穴子も入梅時期を旬とする魚です。6月〜7月ごろに水揚げされる穴子は、「梅雨アナゴ」と呼ばれ、1年でもっとも美味しいとされています。鰻は高くなりましたが、穴子は比較的安いので、丼にしたり、天ぷらにしたり、楽しみ方はむしろ鰻よりいろいろあります。
そら豆もこの時期に出回ってきます。まもなく枝豆も出てきますが、そら豆も食卓のおつまみとしておいしいです。
梅雨の語源としては、この時期は梅の実が熟す頃であることからという説の他に、この時期は湿度が高くカビが生えやすいことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれ、これが同じ音の「梅雨」に転じたという説もあり、この時期は「毎」日のように雨が降るから「梅」という字が当てられたという説がもあります。普段の倍、雨が降るから「倍雨」というのはこじつけ(民間語源)でしょう。このほかに「梅霖(ばいりん)」という呼び名や、旧暦の5月頃であることに由来する「五月雨(さみだれ)」、麦の実る頃であることに由来する「麦雨(ばくう)」などの別名もあります。梅雨のイメージは悪いのですが、言い換えると美しいと感じるかもしれません。
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