視野


視野

視点の類義語に視野があります。視座というものもあります。物の見方ということですが、そこに考えることとか範囲という概念が入ってきます。英語だとscopeとかperspectiveというのですが、その使い分けは微妙でけっこう難しいのです。ScopeはScopeは見る範囲という意味の他に、見るための器械を意味します。日本語の顕微鏡microscope、望遠鏡terescopeは比較的しられていますが、潜望鏡periscopeや聴診器stethoscopeという器械もあります。とくに聴診器は日本語では「聴く」というイメージなので、scopeという語と合わない感じがすると思います。日本語ではほぼ「鏡」という漢字が当てられますが、scopeの語源は「検査する」という意味なので、聴診器を発明したラエンネックは「胸」という意味のstethoと合成してstethoscopeと名付けたそうです。医療器具ではないのですが、万華鏡kaleidoscopeというのもあります。こちらの語源はkalos (beautiful), eidos (shape), and -scope (an instrument for seeing).ということで、「美しいものを見るもの」という意味を日本語訳したのです。確かに花のように見えますから、明治の頃の翻訳は非常にセンスがよい、というか文学的だったといえます。今は訳語をせずカタカナに置き換えるか、英文字のまま導入するので、意味が過剰に広がって、日本英語になってしまう欠点があります。

英語のscopeとperspectiveについては英米人でも意味の違いに迷うようで、辞書にも違いが次のように説明されています。As nouns the difference between scope and perspective is that scope is the breadth, depth or reach of a subject; a domain while perspective is a view, vista or outlook. 名詞として、scopeとperspectiveの違いは、scopeが対象の幅、深さ、または範囲であるということに対し、perspectiveは視野、風景、または見通しの領域という意味の違いがあります。( https://wikidiff.com/perspective/scope)こういう説明を聞いても、なんだかはっきりしませんね。実際、論文のタイトルによくscopeやperspectiveという語がつかわれていますが、その訳も不安定です。なんとなくscopeが見方の広がりを示し、perspectiveが将来への見通しのような使い分けがされています。これらの用語の意味が曖昧なのは、実際の視覚ではなく、思考も含めた抽象的な物の見方だからでしょう。視覚だけでなく、聴覚についても、ただ耳に聞こえるというだけでなく、理解するという意味も含めた聴力という表現もあり、前者を英語ではhear、後者をlistenと使い分けています。日本の英語の時間にヒアリングというのがありますが、本当は英語を聞いて内容を理解する聴解力listening comprehensionというのが正しいです。政治の世界では外部の意見を聞くという意味でヒアリングと言いますが、実際「聞き置く」という形式的な意味が多く、中身を検討されることが少ない点では正しい訳なのかもしれません。また聴覚や聴力による、scopeやperspectiveに該当する用語は見たことがありません。聴野audible areaという語がありますが、これは聞こえる範囲という医学的あるいは物理的な意味で抽象的な意味はありません。やはり人は視覚が聴覚よりも優先されている、という証左といえましょう。

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