兵役 military service
兵役について語るのはタブーのような雰囲気が日本にあります。これもガラパゴス的文化です。
兵役の英語がmilitary serviceつまりサービスです。英語のサービスは意味が広く、教会のミサなどもserviceといいます。徴兵は一般にはdraftドラフトです。野球のドラフトと同じ単語です。ビールのドラフトも同じ語です。正式にはconscriptionまたはenlistmentといいます。Enlistmentとは兵籍つまり籍にのることを意味します。またrecruitリクルートとは新兵募集のことです。
全体的に兵役は一種の職業と考えられているのが世界の主流です。実際、日本でも戦前は軍人は職業の1つでした。一般には、軍事と教育は不可分になっていて、幼年学校、士官学校、陸軍大学のような教育を卒業した人がエリートとして職業軍人になります。一方、徴兵制度のある国では一定期間軍務についた後、除隊して社会人になります。軍務についている間にさまざまな技術を習得するので、免許や資格をとることができ、国家的な職業訓練になっている国が多いのです。また仕事がない国、就職率が低い国では、失業対策のような側面もあります。
軍というと、日本ではすぐに戦争の道具というイメージですが、いつも戦争しているわけでなく、平和な時代には軍は何しているのでしょうか。当然、戦争に備えての軍事訓練ということになりますが、この軍事訓練は幅が広いのです。現代であれば、電子技術の習得や語学訓練、スポーツなどがあります。とくに格闘技は軍事教練の一環という見方が一般的です。それがmartial artsマーシャル・アーツを日本語訳すると武芸というのが一番しっくりきます。外国人から見ると、日本の学校の運動会は軍事訓練と映るようです。入場行進は分隊行進と同じです。日本人は一斉に揃って行進することはなんでもないことなのですが、外国ではこれができないので、軍事訓練の第一歩が行進なのです。そして赤組と白組に分かれて競技を競うのは源平合戦以来の伝統です。ラジオ体操は競技前の準備運動です。そして何より、男子の詰襟は軍服、女子のセーラー服は海兵の制服です。今は可愛いブレザーとミニスカートが広がり、それが欧米では珍しいので流行っています。小学生のランドセルは兵隊の背嚢(ランセル)が元です。昔は男女で色も分けられていました。今は、色は自由になっています。こうした学校教育事情を外国人の目で見ると、日本は軍がないことになっていますが、実際には職業軍人である自衛隊があり、学校では軍事教練が行われているので、潜在的軍備ができている、ということになります。
宇宙開発は当然、軍事ですし、災害救助や治安維持も軍事(軍の仕事)です。日本学術会議は軍事研究を禁止していますが、実際、科学と軍事研究の分離は不可能です。日本では福祉は軍事の対極のように考えられていますが、諸外国では傷病兵の復員後の支援のことです。いわゆる障碍者の圧倒的多数が傷痍軍人で、パラリンピックも傷痍軍人のリハビリがスタートでした。日本人がタテマエで軍がないと主張しても、外国はそうは見ていない、ということを知っておく必要があります。そうでないと日本はズルい国ということになってしまいます。
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