サービス service
この語は英語と日本語で間違いが起きやすい語の代表です。「これお店からのサービスです」と言われたら、「無料提供」の意味と受け取ります。サービス残業も無報酬の残業の意味です。つまりサービスとは無料の意味が強いといえます。英語のserviceにはそういう意味はありません。
喫茶店のモーニング・サービスはコーヒーを注文すると「おまけ」にパンやサラダ、玉子などいろいろなものがついてくるもので、朝だけの特別提供なので、モーニング・サービスと呼んでいます。今では省略して「モーニング」とだけいう店も多いです。普通の省略法だと「モーサー」になるはずですが、なぜかモーニングです。喫茶店のモーニング・サービスは愛知県が有名ですが、現在ではコーヒーがサービスで付いてくるような内容になっています。まだ全国に普及とまではいきませんが、朝食メニューをモーニング・サービスと呼ぶ地域もあり、日本文化として定着しているような状況です。
モーニング・サービスの元の英語はmorning serviceのはずですが、実は和製英語つまり日本英語で、英語だと日曜日午前中の教会のミサのことを指すのが一般的です。アメリカの地方のホテルに行くと、敬虔な信徒のために日曜日の朝、教会のミサへの送迎サービスをしていることがあります。そのため玄関に「morning service」と書いた立て看板が立っていることがあります。これを見た日本人が日本のモーニング・サービスと誤解してコーヒーショップにいったら、日曜日朝は閉店中だった、という笑い話があります。ホテルでは日曜日の朝は食事がなく、いわゆる朝昼兼用のbranchとして豪華メニューを安い値段で提供していることがあります。空腹で朝のミサも大変と思う人がいますが、教会や宗派によってはドーナツやクッキーとコーヒーが提供されることもあります。クッキーといっても、日本のものより大きく、パンケーキをクッキーと呼ぶこともあります。チョコブラウニーを想像していただくと似たようなイメージです。これは無料ですから、ホテルから送迎バスで教会に行き、コーヒーとドーナツをいただいて、ミサに参加して、ホテルまで送ってもらう、という「サービス」をちゃっかり利用する人もいます。
もう1つ綴りは違うのですがmourning serviceというのがあります。これは日本仏教の枕経と同じで死者に対する手向けの儀式です。このモーニングは洋服のモーニングと同じ語で、礼服としては本来は祝儀ではなく不祝儀の服装です。モーニング・コートは喪服という意味です。祝儀の礼装は正式には白です。ちなみに礼装のいわゆるモーニングは昼間に着用するもので、さらに上級の燕尾服frock coatあるいはtail coatといい、夜の正装です。白いネクタイを着用することから通称white tieと呼ばれ、招待状にそう書いてあったら燕尾服着用の意味です。これが最上級の礼装です。英語の時間にはmourningを習うことはまずありません。しかし同音異義語で間違うと大きな誤解がでやすいので、教えるのが実用的だと思います。同音異義語でもto, twoやfor, fourは普通に習いますが、発音が同じであることは習いません。日本の英語教育が文字偏重の証です。
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