肉の話
ベタな語呂合わせですが、毎月29日は肉の日です。いいかえると「肉の縁日」です。肉といえば牛肉、豚肉がまず浮かぶと思います。鶏肉はどうなのでしょうか。魚肉はどうなのでしょうか。トリは微妙で、魚は肉扱いになっていないように思います。肉は英語でmeatなのは誰でも知っています。しかし牛肉はbeef、豚肉はpork、鶏肉はchickenで英語では別語になっています。これを語彙分化といい、文化的関心度の指標として文化人類学では昔から研究されてきました。典型的な例として、牛関係の英語はcow(雌牛)、ox(雄牛)、calf(子牛)、beef(牛肉)、veal(子牛肉)のように細かく意味が分かれて語ができています。つまり分類の必要がそれだけあった、と考えられます。羊についても分化があります。日本語では米が稲、籾、米、飯、ライス、丼、藁など細かく別語に分かれています。雨もたくさんの語彙があります。単純語の方が、歴史が古く、それだけ古くから関心があった、ということになります。その後、必要に応じて語を作る際、新語を作りだすのは大変なので、従来ある語を組み合わせて新語を作る方法がよくとられます。それも間に合わない時は外来語というそのまま取り入れる借用という方法をとります。日本語には肉という語はありますが、動物を食用にする習慣は後からできたため、合成で新語を作りました。そのため、meatにはない果肉とか肉体などを無視した動物肉を中心とした意味が広がりました。牛肉にしても、豚腿肉ham、すね肉shank、肩ロースchunk、ロースloin、肩バラbrisket、バラ肉flankなど、今でも日本語と英語が一致しない部位があります。ハムはとくに誤解があります。
肉に関わる語彙として、日本の肉屋は牛と豚が中心で、鶏肉は鳥屋のことが多いです。スーパーマーケットなどではミート・ショップとして牛肉、豚肉、鶏肉が並べられていることが多いのですが、魚などの魚介類は別のコーナーになっています。Meat shopは和製英語で英語ではbutcherといいますが、butcherには畜殺者、虐殺者という意味もあります。プロレスラーにその名があるのはその意味です。
鹿肉はvenisonといい高級食材扱いですが、日本ではジビエというややワイルドな肉として扱われる猪肉はboar meatといい、普通には食用としない意味が込められています。鯨肉もwhale meatで同様のニュアンスアがあります。魚肉もfish meatといいます。
人間など食用でない肉も含めた概念としてfleshという語あります。「最近、お肉がついた」の肉はfleshです。I have put on flesh.といえば理解されます。シェークスピアの「ベニスの商人」にでてくる肉もfleshです。
焼肉という文化は日本発祥のようで、バーベキューとは異なります。ホルモン焼きも日本独自で対応する英語が見当たりません。しゃぶしゃぶやすき焼きも日本食なので、shabushabu、sukiyakiのように日本語がそのまま英語に借用されています。ホルモンも医学的な意味ならhormoneですが、ホルモン焼きならhorumonyakiのようにするしかないでしょう。
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