爆縮 implosion
北大西洋の潜水艦事故の話はもうマスコミはすっかり忘れていると思います。今更のようで恐縮ですが、米沿岸警備隊のマスコミへの発表の中で、catastrophic implosionという英語が非常に印象的でした。「壊滅的爆縮」という訳語が多かったと思いますが、事実を非常にうまく説明していると思いました。Catastrophicというのは力学的に力が溜まってきたものが突然破壊へと向かうことを意味し、たとえば鉛筆や箸に力を入れて曲げていると突然ポキッと折れます。この極限点がカタストロフィです。臨界点periodical pointということもあります。デジタルな世界にいると、数値が上がっていっても、常に連続的であり、突然変化することはありません。アナログな世界では順に変化した結果、突然変化が起こるのは当たり前の現象です。
爆縮というのは爆発explosionの反対で、突然急激な収縮が起こることを意味します。実は原子爆弾の技術の中心的なコンセプトであることは意外に知られていません。とくにプルトニウムによる核分裂を発生させるには、徐々に加圧しても一部が崩壊するだけに終わるので、爆弾のような急激な爆発を起こさせる核分裂を発生させるには、均一な圧力を一気にかける技術が必要です。それが爆縮です。火薬の爆発による圧力を利用するのですが、普通に爆発させるだけでは均等に広範囲に圧力を掛けられません。そこにかなり高度な技術が要るのですが、それが核爆弾製造技術ということになります。原理は比較的簡単ですが、実行するのがかなり難しいのです。原子爆弾は普通の人の認識では、大爆発が起きて大きな被害が出る爆弾、ということだと思いますが、普通の爆弾とは根本的に原理が違います。
今回の潜水艦事故では、水圧というものすごい圧力が均等にかかってくるので、ある極点に達すると一気に収縮します。それが爆縮です。圧力に対して一番強い立体が球体です。それでほとんどの深海探査船は球体をしています。今回の潜水艇は普通の潜水艦のような細長いチューブ状をしています。チューブは水道管などのパイプと同じで上下左右からの圧力には強いのですが、前後や継ぎ手の部分が弱いです。そして少しの傷でもそこから断裂が広がりやすいという欠点があります。継ぎ手は当然あったでしょうし、傷がまったくなかったということはないと思われます。何度も潜水と浮上を繰り返せば、伸縮と展伸を繰り返すため金属疲労を起こすのは当然です。飛行機の隔壁も同様で、昔、隔壁が断裂して墜落した飛行機がありました。飛行にもドアという継ぎ手と似た強度の弱い部分があり、金属疲労を起こしやすい部分があるので、点検はきちんとやっていますが、潜水艇は果たしてどの程度の点検をしていたのか疑問です。とくに金属疲労をしていて内部に亀裂があっても目視では確認できません。パイプやトンネルでは打音検査という音による検査法がありますが、その程度の検査で超高圧の水圧の耐久テストにはなりません。急激な爆縮による破壊だとすると、内部の人間も同様な超高圧を一気に受けるので、肉や骨も一気に収縮するので原型を留めないことが予想されます。爆縮は爆発同様の結果となります。
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