半夏生


半夏生

2023年7月2日は半夏生(はんげしょう)という雑節の1つです。雑節とは二十四節気の他にある旧暦の行事で、他にも節分、彼岸、八十八夜、入梅、土用、二百十日などおなじみのものもあります。雑節の中であまり知られていないのが半夏生と社日です。昔は夏至から数えて11日目とされていたようですが、現在では天球上の黄経100度の点を太陽が通過する日となっていておおよそ7月2日となっています。変わった名前の由来は半夏(はんげ)という植物が生える頃という意味で、半夏の植物名はカラスビシャクで、この薬草の乾燥させた根茎を半夏と呼びます。半夏は生薬として漢方で用いられ、鎮吐作用のあるアラバンを主体とする多糖体を多く含んでおり、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)などの漢方方剤に配合されるそうです。他にホモゲンチジン酸を含み、またサポニンを多量に含んでいるため、痰きりやコレステロールの吸収抑制効果があるとされています。またかつては、つわりの生薬としても用られていたそうです。半夏厚朴湯は気(き)のめぐりをよくする効果があるそうで、ストレスのある人やのどにつかえのある人には効果があるそうです。半夏瀉心湯は、気が上から下に飲食物を運ぶ流れを助け、飲食物の気が肺に上がっていくのを助け、胃腸を守るという3種類の作用をもつそうです。下痢、消化不良、吐き気、胸やけなど胃腸のはたらきが弱ったときや、口内炎などの症状に利用されます。昔は医者が処方したのですが、今では漢方薬店やドラッグストアでも入手できるようになりました。

半夏生のころはちょうど梅雨明け間近で、田植えの終わりの季節を示す目印とされていたようです。また関西地方では半夏生にタコを食べる習慣があるとか。半夏生にタコを食べる理由は、8本足のタコの吸盤が吸い付く様にあやかり、「苗がしっかり根を張りますように」という願いを込めて、神様にタコを捧げたからといわれています。また、半夏生の時期は、「田植えの疲れを癒す養生の時期」ともされています。このことも、半夏生にタコを食べる理由かもしれません。タコにはタウリンが多く含まれているので、疲労回復効果もあります。同じような理由から福井県では半夏生に鯖を食べる習慣もあるそうです。香川県ではうどんを食べるそうで、ちょうど麦の刈り入れが終わり新麦で打ったうどんを、作業を手伝ってくれた人に振る舞うことが起源だそうです。普段でもうどんを食べる香川県ですが、半夏生のうどんには特別な意味があります。そのため香川県の「うどんの日」は7月2日になっています。

半夏にかぎらず、二十四候や雑節には茶、薬草など植物の採集の最適時期が示されています。これらは経験則であると同時に言い伝えという形で伝承されてきました。明治維新でこれらはすべて迷信だとして放棄してしまうことを強制されました。漢方という医療も西洋医学の方が正しいとして放棄されてしまいました。現代になって漢方や鍼灸など東洋医学が見直されてきたのも皮肉というより、経験則が評価されてきたということです。

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