半導体



6月30日はトランジスタ記念日です。トランジスタといっても覚えている人は高齢者のみで、しかも意味を知っている人は数少ないと思います。トランジスタ・ラジオがソニーの人気商品でしたし、トランジスタ・グラマーという表現が死語になって久しいので、今では何のことかわからない人がほとんどだと思います。トランジスタは半導体の一種で発明者はこれでノーベル賞をもらったくらいの大発明でした。現代でも話題になる半導体とは何なのか理解している人は意外に少なく、産業の米だとか、これがないと製品が作れないとかで大騒ぎしています。
半導体の前にまず導体を理解しましょう。導体は英語ではconductorといいます。この語の訳はたくさんあって、車掌さんとか指揮者という意味もあります。導体というのは伝導体というのが正しく、電気などをよく通す物体のことです。熱をよく通す熱伝導体というのもあります。電線は中に銅線が入っていることが多く銅は良電気伝導体です。日本では雷除けという意味で避雷針というのを英語ではlightening conductorまたはlightening rodといいます。日本では雷をthunderとしかいいませんが、英語ではむしろlightening、ピカッの意味が中心です。
良電気伝導体、略して良導体に対して、ほぼ電気を通さないのが不導体または絶縁体といい英語ではinsulatorといいます。そして半分電気を通すのは半導体で英語ではsemiconductorといいます。日本語は英語の訳語です。電気を通さないことを電気抵抗(electrical) resistanceといいます。電流と電圧と抵抗の関係はオームの法則なのですが、中学で今はあまり習わないみたいですので、理解していない人が多いようです。良伝導体の金属と不伝導体を貼り合わせると、その組み合わせで電気が通ったり通らなかったり、あるいは流量を調整できるようになります。乱暴な簡略化ですがそんな感じで理解すると先に進めます。
電気を通したり、通さなかったりすることをスイッチングといいますが、要するにオンオフのことです。また電流量を調整することで増幅や減衰をコントロールできます。
最初にこの制御をする機器としては真空管が使われました。真空管は今でもマニアの間で人気ですが、中を真空にしたガラス管の中に陽極と陰極の電極を入れて電子の流れ=電流を制禦する装置で音を増幅したり、減衰したり、流れを一定(整流)したりオンオフをするものです。問題はすごい熱を発することで、初期のコンピュータは大量の真空管を使ったため、ものすごい熱量を発し、触るとヤケドするので大変だったという話を聞きました。ラジオでも3球とか5球と真空管の数を表していました。それがトランジスタの発明により、熱をあまり持たなくて小さな半導体になったことで、多くの機械の軽量化、小型化が実現しました。材料は初期にはゲルマニウムが多く、ゲルマニウム・ラジオという名称もありました。ラジオも持って歩けるほど小さくなったのがトランジスタ・ラジオです。その後、ウオークマンへと発展していく先駆けでした。日本は多くのトランジスタ製品を輸出することで儲かったのです。しかしその後、ダイオードが発明され、さらに半導体を組み込んだ集積回路integrated circuit=ICが発明され、集積化は発展して小型化高性能化の競争になりました。現在、半導体といっているのはこの集積回路のことです。LSI,VLSIとなるにつれ、製造技術競争になり生産者が限られてきたことで供給の偏りが問題になってきています。

トランジスタラジオ

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