ハンコの日
8月5日は「ハンコの日」です。このハンコという日本独特の制度は最近、公文書や私文書でも省略する方向に進んでいます。確かに押印するのは面倒な作業ですが、代わりに自著するのはもっと面倒です。ハンコの起源は中国ですが、現在の中国には印鑑制度はないそうです。
ハンコは「読んだ」あるいは「承認した」という意味を示しています。日本以外では署名(サイン)がその機能を果たしています。ハンコには三文判といわれる既製品の安い物から、スタンプインなど大量に対応できるものまで種類があります。スタンプは日本以外でも普及しており、たとえば入国管理(passport control)でもパスポートに日付の入った許可印が押されます。
三文判は簡単に入手でき、それゆえに書類の偽造も簡単だという人がいますが、サインの場合でも本人確認することは稀で、サインの有無を確認する程度です。ハンコの場合も本人証明が必要な場合は印鑑登録制度があり、偽造はかなり困難になっています。その機能を活かした電子印鑑という制度も近年はできてきました。
遺言書の場合は今でも本人の自著と押印を求めています。何年か前の民法改正で、目録などについては簡便な方法が認められるようになりましたが、本文は改正後も自著と押印が必要です。自力で書けない場合は公正証書などの方法もあります。
サインの偽造は登録印鑑よりは可能性が高いといえます。本人でさえ毎回ズレが出ますから、似たようなサインを真似ることはそれほど難しくはありません。そもそも日本以外では本人による承認をそれほど厳密に行ってこなかったといえます。それだけに暗証番号とか指紋認証とか顔認証などの技法を開発していったといえます。そのうちDNA認証システムが開発されるかもしれません。
今はやや減りましたが、会社の稟議書など承認印がズラリと並びます。今でも公的機関への申請書類には印鑑欄がたくさん書いてあるものがあります。これも日本独自の責任の分散にあるのかも知れません。日本の役人は権限にうるさく、その証が承認印です。権限が一人に集中しないように合議が原則で、「全員が賛成した」=責任は合議体にある、という意思表明です。逆に考えると全員の承認がないと無効である、ということになり、遺産相続ではそれが問題になり、現在の空き家問題の主たる原因になっています。遺族全員の合意を示す書類に署名捺印が必要となっています。これらはハンコの短所を示す例ですが、それをなくそうということで、ハンコそのものをなくすという主張をする政治家もいます。これは確かに国際化の一部ではありますが、ハンコの長所をなくすことにも繋がります。それで移民政策推進派は脱印鑑を主張しています。
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